登竜門Q&A

登竜門に関するご質問をまとめています。

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Q&Aへの回答

全体に関するご質問

動画がいつまで視聴可能かの期限はどこに表示されてますか?また、視聴可能な日数は次の動画が出るまでの日数で、今見れる動画が見れなくなる日数ではない気がするのですが、、、

視聴可能な期限は以下の画像の場所に記載してあります。

同じシリーズの間は、脳画像、脳科学、評価は次の動画のページでも見ることができます!

最後のアプローチの動画は1週間で完全に見られなくなり、脳画像などの動画も見られなくなります!

ですので、次の動画が送られてくる日数という認識で間違いありませんが、各シリーズの4本目の動画(アプローチ)を除き、同じシリーズの動画は復習できるというイメージです! シリーズが変わるとこれまでの動画は見られなくなります!

スキップしたらもう動画は見られなくなってしまいますか?

4本目の動画(アプローチ)以外は、全て次回以降の動画でも復習が可能※ですので、早く学びたい人はぜひスキップ機能を使ってみてください!

つまり、1本目の動画(脳画像)は、2~4本目の動画(脳科学、評価、アプローチ)でも見られます!

2本目の動画(脳科学)は、3~4本目の動画(評価、アプローチ)の動画でも復習が可能です!

※同シリーズに限る

いつも理解するまでに時間がかかるのと、1回分っても他の知識を入れるとどうしても部分的に忘れてしまうことが多いです。何回も繰り返し動画を見返したいのですが、ステップ1からステップ2になってしまうと前の動画が見られないと思うのですが、いつでも繰り返し見られるようなシステムを今後作っていただくことは可能でしょうか、、

貴重なご意見ありがとうございます!!!

ステップに関しては、同シリーズ内であれば前の動画を復習することが可能です!シリーズを跨いでしまうと前シリーズの内容は見ることができません(運動野の脳画像はアプローチを見ていても復習することが可能!しかし、被殻シリーズへ移ってしまうと運動野の内容は復習できない)

実は現在全ての動画がいつでも好きなだけ見られて、資料もスマホでも見やすいデザインへ変更している「登竜門 完全版」を制作中です!

完成まで少々お待ちください!

運動野に関するご質問

old M1とnew M1っていうところは場所の名前ですか?それとも線維の名前ですか?なかなかイメージが付きにくかったので教えていただきたいです。

old M1とnew M1はどちらも一次運動野(M1)をより細分化した際の場所の名前になります!吻側(前方)がold M1、尾側(後方)がnew M1になります。MRIで同定することは難しいので、臨床所見と照らし合わせながら評価していくことになります!

上田式片麻痺機能テストはどうですか?スクリーングとしては良くセラピスト間では共有しやすいですが、論文や学会では用いられにくい印象です。

上田式ですね!正直学校では習いましたが臨床で使ったことがありません、、、

おっしゃる通り、BRSと比較した際の上田式のメリットとしては動作を細分化してあるのでどこが問題点なのかがセラピスト間で共有しやすいところが挙げられますと思います。

ただ、BRSを細分化し、信頼性・妥当性が検証されていて、国内・国際ガイドラインでも推奨されて、ゴールドスタンダートとされているFMAがあるので上田式を選択することは少ない気がするというのが僕の感想です!

もちろん使ってはいけないということはありませんし、僕も使ったことがないので否定する気もありませんが、せめてガイドライン等で推奨されていれば使う可能性があるかもな〜といった印象です!

予後予測を立てるのが難しく感じています。発症72時間以内に肩の外転、手指の伸展が出現すれば予後がいいと言われていますので判断しています。また、海外論文のFMAの予測式を利用しているのですがこのような形でも予後予測を行っていてもいいんでしょうか?

臨床のご質問ありがとうございます!

予後予測って難しいですよね、、、

予後予測については「確実に当たる指標」というものはなく、複数の所見を組み合わせて考えることが大切です。

例えばご指摘のように、発症72時間以内に肩の外転や手指の伸展が出現すれば予後が良いというのは「SAFE score」にも関連する有名な知見で、FMA–UEやmRSとの関係も示されています。実際にStinearらの研究でも、早期の随意運動の有無が3ヶ月後の上肢機能をよく予測すると報告されています。

また、海外論文で報告されているFMAを用いた予測式を使うことも、科学的に裏づけのある方法のひとつです。数値化された予測式はセラピストの主観に偏らない判断材料になるので、臨床での予後予測に取り入れることは十分に意義があります。(当てはまらない方が3割近くいることも考慮しておきましょう)

ただし大切なのは、「一つの指標で断定しない」ことです。脳画像所見や病巣の部位・大きさ、急性期からのリハビリの反応性、課題指向型アプローチや電気刺激療法などの実際の介入による変化も加味して、総合的に判断していく必要があります。

ですので、

  • 早期の随意運動(SAFE score)
  • FMAなどの予測式
  • 画像所見(CSTや内包の損傷の有無など)
  • 臨床経過と介入に対する反応

これらを組み合わせることで、より現実的で信頼性の高い予後予測につながると思います。

まとめると、「72時間以内の随意運動」や「FMAの予測式」を使った判断はエビデンスに基づく妥当な方法ですが、それを絶対視せず、画像や臨床経過と合わせて“多角的に”予測することがポイントです。

newM1の損傷と肢節運動失行の鑑別ポイントを教えてください。

肢節運動失行はですね、定義上「運動麻痺や感覚障害では説明できない不器用さ」とされていて、特徴的なのは麻痺や筋力低下を伴わずに生じることなんです。

なので、筋力や感覚は保たれているのに、ボタンを留めるとか硬貨をつまむといった細かい手の動きがぎこちなくなることがあります!

一方で、newM1の損傷になると皮質脊髄路(特に単シナプス性結合のCM細胞)の障害に基づいて明らかな運動麻痺や筋力低下が出てきます。

なので臨床で大事なのは、「筋力低下を伴う不自由さ」なのか、「筋力はあるけど器用さだけが落ちているのか」を見極めることです。ここを押さえておくと、鑑別しやすいですよ!

被殻に関するご質問

運動ループのところはすごく理解するのに時間がかかるはずなのに、こんなに簡単にまとめてあるのですごく分かりやすかった。また、報酬系でも褒めることが大事であるってのと、段階的に難易度を上げていく必要がある事も理解する事ができた。教材とかで褒めるのにも成功できた過程を褒めてあげる事や、褒めすぎも良くないってのも学習した事あるがあっていますか?

運動学習的にいうと「結果の知識(KR)」と「パフォーマンスの知識(KP)」のことですね!

KRに関しては内発的動機づけと自己効力感が高まると報告されているので、獲得したい運動や活動が明確な時にはKRを提供するのが望ましいかもしれません。

一方でKPはパフォーマンスに関するフィードバックですので、運動イメージなどの運動の精度を高めていきたい際にはKPを提供するのが良いかもしれません(KPに関する文献をもっていませんので、僕個人の意見です。今後論文等を見つけたら修正するかもしれません)。

もちろん両方同時に与えてはいけないという訳ではありませんので、本人の反応を見ながら割合を調整するのがベストかと思います。

褒めすぎも良くないということに関しては、おっしゃる通り、学習が進むにつれて過度な褒め(フィードバック)は学習効果を阻害しうると報告されています。

これは心理学的にはアンダーマイニング効果と言われていまして、学習が進むにつれて内在的フィードバック(感覚情報など)を増やしていきたいところですが、その際に外在的フィードバック(セラピストからの声掛けなど)が多すぎてしまうと、分かりやすい外在的フィードバックにばかり依存してしまい内在的フィードバックでの学習をしなくなってしまうので、結果的に学習が進まなくなってしまいます。

これを避けるためには、ほどよい褒めが推奨されています!

左被殻出血への予後予測の立て方が難しいです。50代男性、発症から3ヶ月たち、車椅子駆動近接監視レベル、BRSオールⅡ、高次脳機能障害(注意、遂行↓ 運動性失語)、自宅復帰希望です。担当PTに歩行の予後予測尋ねると自宅内杖歩行自立、屋外見守りとのことなんですが、正直予後予測に不安です。

臨床のご質問ありがとうございます!

予後予測に関しては非常に難しいですよね。。。

被殻出血ということに関してであれば、被殻出血のCT分類があると思いますのでまずはそちらを参考にしていただくのが良いかと思います。また、血腫量なども重要でして、被殻の場合「被殻/外包」では32.5ml、「淡蒼球/内包」では5.5mlが予後良好(mRS:0〜2)のカットオフ値とされています。

運動麻痺(上肢にはなりますが)に関しては、発症3日以内のSAFE scoreやFMA–UE、発症1ヶ月時点での肩関節(約60°屈曲)と中指(約30°屈曲)の運動レベルが重要とされています。その他、全身状態としては発症数日以内のNIHSS(前方循環8点、後方循環5点以下で3ヶ月後の予後良好)も参考になるかと思います!

移動面の予後予測の参考としましては、FMA–LEやFBS(1ヶ月時点で45〜50点で歩行自立の目安、トイレ自立は40〜42点が目安とされる)やTUG(20秒以内が屋外外出可能の目安、30秒以上でADLなどに介助の可能性)、10m最大歩行速度(室内歩行自立の目安が30m /分以上)、DGI(平地歩行自立は17点以上が目安)、その他6分間歩行テストやmini-BESTest、TCT(発症7日以内に40点以上で6週間以内に歩行自立の目安。発症3日以内にTCTの座位30秒保持可能かつ下肢MI25点以上で6ヶ月後の歩行が自立になる可能性。発症から6週間で50点以上の場合、18週後に10m歩行が自立する可能性)など、多角的に評価していく必要があります。

さらに高次脳機能障害もあるとのことでしたので、身体機能の予後予測に加味していく必要があります。(高次脳機能障害の評価に関しては今だに検討の余地があるものが多く、これといったカットオフ値はあえて控えさせていただきます)

これらのことから、移動面の不安がある場合には、担当PTに上記評価などを確認していただき、OT・PT・STで協議していく必要があるかと思います!

参考になれば幸いです!

視床に関するご質問

運動の速度は小脳ってありましたが結構失調の患者さんにメトロノーム使っている場面を見かけます。被殻の障害で起きている失調症状にはあまり意味が無いのでしょうか。

目的や難易度設定によって変わるかもしれません。

小脳性運動失調に対してメトロノームを使用するのは、フィードバック(FB)制御が苦手な方に対して、難易度を上げるために、外的環境(メトロノームの場合は音)に合わせた運動(FB制御)を促進する目的が考えられます。

一方、基底核損傷の場合には、既にプログラムされた一連の運動手順(フィードフォワード)が苦手になる場合があり、そういった場合に手がかり(難易度を下げる)として外的環境(メトロノームの音など)を使う方法があります!

意識障害(JCSⅠ桁)、注意障害、感覚障害(表在深部共に)、筋緊張の亢進、運動麻痺と様々な症状を呈した方に対してどの症状からアプローチしていくのが望ましいのでしょうか?

まずは意識レベルに対する介入かと思います。ただ、今回のご質問ではJCSⅠ桁とのことですので、重点的という訳ではありませんが、抗重力活動や有酸素運動など上行性覚醒系を賦活できるような内容は多く入れていくかと思います。

その後は、特に問題点となっているところから介入していきます。例えば、「USNがある」「注意散漫で集中できない」などの身体機能練習に支障が出るような注意障害がある場合には注意機能を意識した介入から行なっていきます。身体機能に関する介入としては、どの症状が最も運動障害の要因として大きいのかを精査し、最も影響が大きいものを中心とした介入をしていきます。例えば、感覚障害による影響が大きい場合には、物療などでの感覚入力をメインとしながら運動療法を行なったり、運動麻痺による影響が大きい場合にはレベルに合わせて電気刺激療法や課題指向型練習を実施していきます。

筋緊張に関しても同様に「なぜ亢進しているのか?」を考え、影響が大きいものから介入していきます。例えば、感覚障害や過度な脊髄興奮性、運動イメージのズレ、高い難易度などが考えられるので、評価しながら調整していきます。もちろん、最も影響が大きいものへの介入では効果が得られにくい場合もありますので、そのような場合には改善しやすい(即時効果がある)ものから介入することもあります。

このあたりは、対象者の状況やキャラクター、セラピストのキャラクター、2人の関係性などで大きく変わりますので正解はありませんが、どれがいいのかを考えながら変更していく必要があります。まさに臨床推論の真骨頂です!

素敵な質問ありがとうございました!

視床出血の症例を担当する機会が増えてきたのですが、脳画像で『内側に向かって出血しているのか、外側に向かって出血しているのか』という判断がまだ難しく感じています。脳室穿破がある場合は内側に進展していると考えて良いのかと思いましたが、必ずしもそうではないと聞きました。このような場合、どのような所見やポイントを押さえて内側型・外側型を区別していけばよいのでしょうか?

ご質問ありがとうございます!

まず、出血の方向についてですが、視床出血の場合は脳質側へ向かって血腫が進展している場合は内側、内包や被殻方向へ血腫が進展している場合は外側と覚えるのが分かりやすいかと思います。また、大切なのは血腫がその方向に進展したことで、どのような神経線維が損傷される可能性があるのか?を考え、症状を予測し、評価していくことかと思います!

続いて、脳室穿破についてです。

まず「脳室穿破」という言葉の定義から整理しておきましょう。

脳室穿破とは、血腫が脳室壁を破って脳室内に流入する現象を指します。CT画像では、血腫と脳室内血腫が連続して描出されることで確認されます。

一般的には、被殻や視床など脳室に近い部位での出血で生じやすく、特に内側方向へ広がった血腫では早期に脳室穿破が起こることが多いとされています。

ただし、「脳室穿破=必ず内側型」というわけではありません。外側への進展であっても血腫が大きくなれば、側脳室の下角や第3脳質、第4脳質などから脳室へ破綻することがあります。

つまり、視床出血の場合、被殻方向へ血腫が進展していたとしても血腫量がかなり多い場合には、脳室内に血腫が及ぶこともあるということです!

PT6年目です。右視床出血症例に対する機能的電気刺激の使用に関して質問です。意識レベルや認知機能はクリアですが、左足部に下垂足を認めています。当院にあるIVES proを使用しようと考えておりますが、前脛骨筋の該当部位である左下腿前面は感覚脱失しております。このような場合にはIVES proのような電気刺激は禁忌に当てはまりますでしょうか。禁忌である場合、認知機能などがクリアな本症例にはミラーセラピーのような介入が適しておりますでしょうか。よろしくお願いいたします。

臨床的で素敵なご質問ありがとうございます!

大前提として、「下肢へのアプローチが僕の専門ではない」こと、「電気刺激療法に関するご質問であり登竜門の内容はない」ことから可能な範囲での回答とさせていただきます。

まず結論から言いますと、感覚障害への電気刺激は禁忌とされていることもありますが、近年は「注意が必要」とはなっておりますが、禁忌というわけではありません。

ミラーセラピー(MT)などに関してですが、おっしゃる通りMTは有効かと思います!

と、ここで終わってもいいのですが、少し寂しい気もするので、少しだけ追加で解説させていただきます。

電気刺激の選定ですが、今回は機能的電気刺激(FES)を選択されていますが、もし感覚障害が原因で下垂足のような症状を認めている場合は、感覚機能への介入として、感覚閾値でのNMESやTENS、PNS、CCFESなども対象になるかもしれません。もちろんFESも選択肢に入りますが、FESの場合は皮質脊髄路や運動イメージの低下などの要因がメインであるときに効果的な可能性があるかと思います!IVES proを使用されるとのことでしたので、介入目的を意識してパラメータを調整するのが良いかと思います。

視床出血とのことですが、具体的な視床核や周辺構造への影響なども考慮しつつ、臨床所見と照らし合わせることで、下垂足が起きている要因やそれに対する電気刺激療法などのアプローチが具体的になるかと思います!

とても臨床的な質問で気分が上がりました!引き続き頑張ってください!

橋に関するご質問

橋で出現する運動失調は同側の上下肢でしょうか?

ご質問ありがとうございます!結論から言いますと「対側の上下肢の運動失調(運動麻痺と同側)」が出現します!

これは大脳小脳ネットワークから考えると良いかと思います↓

左大脳皮質からの指令で動く右上下肢を例に解説しますね!

左大脳皮質→左橋核→交叉して右側へ(横橋線維)→右中小脳脚→右小脳皮質→右歯状核→右上小脳脚→交叉して左側へ(中脳で)→左視床VL核→左大脳皮質というループになります!

つまり!!!

左橋は左大脳皮質と連絡をとっており、左大脳皮質が制御する上下肢は「右」側になりますので、左橋の症状(運動失調や運動麻痺)は右側に出現するといことになります!

先日は橋の無料セミナーありがとうございました!機能だけでなく解剖も細かく説明を聞けてとても勉強になりました。 遠心性コピーの所で、自己主体感というのは具体的にどの様な事を指しているのか教えて頂きたいです。

無料セミナーもnoteも見て頂きありがとうございます!

この内容はラジオでも解説しているのでぜひご視聴ください!

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橋セミナーについてのご質問へ回答しました!むっちゃ大切な内容です! - サギョウ先生の臨床ラジオ | stan... 一般放送では、僕らRe:Gakusyaの想いや現在の立ち位置の共有、臨床での気づきなどについてお話します! 医学的な内容はかなり少ないと思いますがご容赦ください! メンバー...

こちらの画像ですね↓

まず、自己主体感とは「自分の行為や運動が自分自身によって引き起こされていると認識する感覚」でして、別に「行為主体感」や「運動主体感」とも表現されます。

この自己主体感を得るためには、自分で行おうとする運動予測(フィードフォワード)と実際の運動の感覚情報(フィードバック)との一致が重要とされています。

余談ですが、随意運動にはこの「自己主体感」が伴う必要があるとされていまして、この自己主体感が高い人ほど運動学習に優れていると言われています。

さて、ご質問の本題に移りますが

上図では、小脳で運動を予測する(順モデル)ために必要(運動を予測するためには事前の運動プログラムと現在の自分の状態(ボディースキーマ)がわかる必要があり、小脳で照合される)な、事前の運動プログラム情報(フィードフォワード)を大脳皮質から橋を介して遠心性コピーとして連絡していることがわかります!

つまり、小脳での運動制御に必要な情報提供として遠心性コピーが必要ということです!

フィードフォワードやフィードバック、内部モデル(順モデル・逆モデル)について詳しく知りたい場合には、こちらの記事をご参考ください↓

note(ノート)
【反省】運動制御について改めて勉強してみたら全然分かっていなかった件|サギョウ先生 どうも、サギョウ先生です‼️ 今日は、運動制御についてのお話しです。 なぜ運動制御について解説するかと言いますと タイトルの通りでして、運動制御って普段当たり前のよ...
右橋梗塞の方を担当しています。脳画像は橋底部よりの障害で、FMAは正常反射、手指の項目と協調性スピードで減点が見られました。(ARAT.STEFはまだ未評価です。)母指探し検査は正常なので、内側毛帯までは障害されていないと判断しました。腱反射の亢進・手指の軽度出力低下はCSTの損傷。皮質橋小脳路の障害によって遠心性コピーが小脳へ送られていないため失調症状が出現しているのではないかと登竜門を見て考えました。正解なのかどうかは分からないのですが、登竜門を見たことによってここまで考えられるようになりました。ですが、ここからアプローチとなると全く思いつかず、筋トレや電気、課題指向型が動画内で挙げられていると思うのですが具体的なアプローチ方法や難易度調整などまで辿り着けません。どうすればこの辺を考えられるようになりますか?

放線冠に関するご質問

ご質問お待ちしております!!!
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小脳に関するご質問

無意識下の感覚について、まだ自分の中で十分にイメージができておらず、そのために障害の有無を判断することが難しいと感じています。こういった感覚をどのように評価すればよいのでしょうか?

意識に上らないということは認知できない感覚ですので、一般的な表在感覚検査や深部感覚検査のような定量的評価は難しいかと思います(母指探し検査や位置一致テストなどで要素の一部として評価することもできますが、正確なものではありません)。

こういった場合に、動作の中から評価をしていくことになりますが、こちらも意識できない固有感覚の他にもさまざまな要因が絡んでいるため、参考程度に留めるのがオススメです。

例としては、階段昇降や閉眼での運動などで支持脚(意識に上らない固有感覚低下が疑われる側)が安定しないなどの様子が見られることがあります(症状の一例をあげるとLateropulsionなどが脊髄小脳路損傷の代表例となります)。

ゆっくりとした動作では他の感覚での代行の可能性もあるため、やや早い運動時の観察も必要かと思います!

また、電気刺激やライトタッチなどで感覚を増やした時と感覚入力を行わなかった時との差を比較したりするのも良いかと思います!

状断からみた小脳を開くってところがイメージしにくくて、縦に伸ばしたのが良くあるスライドでの説明で合ってますか?

これややこしやーなんですよね!!!

でもラジオではなしていてまとまったので共有します!

①右手で「逆C」を作ります(これが矢状面から見た小脳です)

②手指・母指を伸展します(これが小脳を開いた状態です)

③それを手背(手の甲)側からみます(これが教科書でよくみる開いてあるやつです)

補足!

「逆C」の手指の指先が「Ⅰ-Ⅱ葉」、母指の指先が「Ⅹ葉」あたりでして、手指のPIP関節あたりが「Ⅳ〜Ⅴ葉」、母指のMP関節が「Ⅷ葉」あたりに該当します。

運動制御に関するFF、FBと内部モデルに対するFF、FBの違いがごっちゃになります。 字を書くことで例を挙げてみたんですが、最初はぎこちなく書いた字(FB制)でも、練習を重ねると予測的に滑らかに書けるようになる(FF制御)。これが運動制御? 字を書くとき、大脳から「書くつもりの信号コピー(FF)」と、実際の手の動きの感覚情報(FB)が小脳に送られる。これが内部モデル? どうでしょうか?

小脳のFFとFBに関するご質問ですね!

結論から言いますと「内部モデルは運動制御の仕組みを説明する理論モデル」なので、FFとFBは運動制御も内部モデルも同じと理解していただて大丈夫です!内部モデルが形成されていくから運動制御が向上していきますし、運動制御が向上したということは正しい内部モデルが構築されてきているといった感じです!

なので、例を挙げていただいている内容はどちらも正しいですよ!

すごく初歩的な質問で恐縮なんですが、小脳の脳画像の動画のところで、6~7スライド目の図の見方が分からなくて、ご教示いただけますと幸いです。

このスライドのことですね!

この画像は小脳を真後ろ(後頭側)から見た図になります。

分かりやすく小脳核を見えるように記載していますが、実際にはこのアングルからは見ることができません。

正確には右図(上下)のように小脳の中心の方に位置しています。これのせいで分かりにくくなっていたらすいません。。。

小脳の構造は大きく前額面的に「虫部」「傍中部」「半球」に分けられたり、矢状面的に「前葉」「後葉」「片葉小節葉」に分けられたりします。

さらに細かく第Ⅰ葉〜Ⅹ葉まで分かれていますが、ひとまずは前額面・矢状面的な分類を理解していれば大丈夫かと思います。

そして、小脳で1番理解しておきたいのは、機能的区分である「前庭小脳」「脊髄小脳」「大脳小脳」かと思います!

まずはここから覚えてみてくださいね!

急性期・亜急性期(可塑性が高い時期)における小脳性運動失調へのアプローチでは、脳の可塑性(リカバリーを含む)が比較的高いため、小脳の役割である「教師あり学習(誤差修正に基づく学習)」自体の再獲得・改善を目指したアプローチが有効である可能性はありますでしょうか。小脳の損傷部位によるとは思いますが、この時期に、積極的に誤差修正を促すようなトレーニング(例:特定の運動課題を反復し、誤差をフィードバックする)を実施することで、運動失調自体の改善(小脳機能のリカバリ一) に効果を得ることは期待できると考えて宜しいでしょうか?

臨床的なご質問ありがとうございます。

まず結論から言いますと、小脳疾患の運動失調に対して、誤差修正学習を意図した協調運動練習を入れること自体は合理的で、一定の改善を期待できる可能性があります。一方で、現状のエビデンスからは

  • 「標準リハより明確に上乗せ効果が常に出る」とまでは言い切れない
  • 改善があっても、それは小脳そのものの完全な回復というより、残存小脳回路+他ネットワークの再編成を通じた運動制御の改善として理解するのが妥当

…という立ち位置になります。

残存する協調障害や歩行失調に対しては高頻度かつ課題指向型の協調訓練が有用と考えられ、実際、ロボット支援などによりエラーを繰り返し体験させ適応を促す訓練や、意図的に体の揺れ(エラー)を許容して自己修正を学習させるアプローチは、失調改善に寄与しうることが示唆されています。

ただし、小脳損傷により誤差検出・適応機能自体が低下している場合も多く、そのような患者ではエラーの増大だけでは効果が出にくい可能性があります。このような場合には、言語的フィードバックによる明示的な学習や、他の運動学習(大脳基底核系での強化学習や皮質での教師なし学習の活用)との併用など、患者の学習様式に合わせた工夫が重要だと考えています。

まとめると、エラー学習を応用したリハビリテーション(協調運動訓練やエラーフィードバックを伴う訓練)は小脳性運動失調の改善に一定の効果が期待できるものの、その有効性を明確に裏付けるエビデンスはまだ限定的です。特にヒトを対象とした臨床研究は少なく、効果量や最適な介入プロトコルについても研究の余地が多い分野です。

急性期~亜急性期という可塑性の高い時期に、集中的かつ患者に適したフィードバックを用いた協調訓練を行うことで、SARAやICARSといった客観的スコアで測定される運動失調が改善し、機能的な自立度向上につながる可能性もあります。

慢性期や脊髄小脳変性症などの進行性疾患においては、小脳の機能的可塑性が限定的であると考えられます。この場合、失調自体の改善は特に難しく、目標とする動作(例:字を書く)の獲得は、代償的な運動学習によるもの。すなわち上肢の運動失調自体は残るものの、その失調パターンを考慮に入れた上で、動作特異的に上手に付き合う方法(特異的な動作パターン)を獲得すると理解しています。広い意味では失調が良くなるというよりは失調のある上肢を上手く使えるようになるって感じで捉えていますがその理解で大丈夫でしょうか? ​また、このような代償的学習の獲得メカニズムとして、小脳の「教師あり学習」を補うために、強化学習や教師なし学習は関わっていると考えますが、特に、代償戦略を獲得する上で、どちらの学習メカニズムがより主要な役割を果たすか、あるいは対象者への臨床での指導法や関わり方(例:目標達成に報酬を与える、感覚情報を強調するなど)との関連性についてご教示いただければ幸いです。

とても臨床的で鋭いご質問ありがとうございます!

結論から言いますと、とても整理された理解だと思います。

慢性期や脊髄小脳変性症のような進行性の小脳疾患では、小脳が担う教師あり学習は障害されやすく、失調そのものの改善は限られます。そのためリハビリテーションで見られる動作の上達は、失調が治るというよりも、失調を抱えたままでも目標とする動作を遂行できるようになる代償的な運動学習によるものと考えられています。つまり、失調そのものが消えるわけではなく、「失調を持ちながらも上手に動けるようになる」ことが回復の本質です。

このような代償的な学習を支えているのは、小脳のエラー学習ではなく、報酬や成功体験に基づく強化学習と、繰り返し動作を通して徐々にパターン化する教師なし学習です。小脳が損傷を受けても、大脳基底核や大脳皮質のネットワークがそれを部分的に補い、動作の試行錯誤や反復によって「自分に合った動かし方」を見つけ出していきます。ただし、必ずしも教師あり学習が全く起きないという訳ではないといことも可能性に入れておきましょう。

臨床的には、報酬を明確に提示すること(例えば「できた」「上手くいった」という成功体験を感じられる工夫)や、課題特異的な練習を繰り返すことが重要です。感覚情報を強調したり、動作の成果に対して即時的なポジティブフィードバックを与えることも、強化学習を促すうえで有効です。反対に、誤差を強調しすぎる指導は、小脳性失調をもつ方にはむしろ学習を妨げる場合があります。

実際、僕が脊髄小脳変性症の方を担当した際に、報酬を意識した介入とその反復によって徐々に動作が定着した経験をしました。最近の脊髄小脳変性症を対象としたシステマティックレビューでもエビデンスレベルは低いもののリハビリテーションによってSARAスコアを有意に減少させ、FIMの向上を認めたとの報告もあります。このことから進行性疾患であっても、適切な介入を行うことで少なからず身体機能やADLへ良い影響を与えることができるのではないかと考えています!

つまり、進行性小脳疾患のリハビリでは「失調を治す」ことを目的にするよりも、「失調を抱えたままでも目的動作を上手く遂行できるようにする」ことを目標にし、その達成には報酬(強化学習)反復(教師なし学習)をうまく組み合わせたアプローチが効果的の可能性があります。

ただし、運動学習はそれぞれが厳密に分かれているわけでは有りません。強化学習が有効に働くには「探索」と「運動ノイズ(試行錯誤の変動)」のバランスが必要であり、小脳損傷によりその調整が困難になることがあります(小脳損傷により強化学習も影響を受ける可能性がある)。また、教師なし学習によって環境の統計構造や特徴表現を形成し、それをもとに強化学習が報酬関連行動を学習します(つまり、強化学習が単独で働くよりも、教師なし学習が補助的に働く方が効率的な行動選択が可能になる)。さらに最近では、小脳・基底核・皮質は実際には独立せず、複合的な「スーパーラーニング(仮説)」として相互に補完的に動作することが提案されています。このことから、どの運動学習が効果的であるかは目の前の対象者に応じて変えていく必要があるかと思います。

ラジオでの解説を聞く

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