電気刺激療法 Q&A

サギョウ先生

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サギョウ先生

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基礎知識関連

サギョウ先生

主に電気や脳科学に関する基礎的な内容に関する質問です

TENSとIVESの違いを教えてください。

TENSは経皮的電気刺激の略でして、主に鎮痛を目的とした電気刺激療法になります。TENSは、比較的長時間(主に感覚閾値)電気を流します。一方、IVESは随意運動介助型電気刺激の略でして、本人の筋活動を検出し、それをスイッチとして電気を流す電気刺激療法になります。主に運動閾値での刺激強度で設定しますが、筋活動を検出しない場合には電気が流れないので長時間の治療が可能です!

周波数が50Hz~100Hzの場合、筋の収縮力は変わらないのであれば、筋の疲労具合も変わらないのでしょうか?100Hzを超えて刺激するとどうなるのですか。

筋収縮力に関しては50〜100Hzでは大きな差はないとされています。一方で、筋疲労に関しては100Hzが50Hzよりも早く疲労を起こしやすいと言われています。ただし、これは10秒以上持続的に電気刺激を負荷した場合に起きる現象とされています。マウスの研究ですが、100Hzで0.5秒間刺激した場合では、筋線維の内部ではCa2+濃度が一定に上昇し高い発揮張力が得られたのに対し、30秒間刺激では細胞の中心部におけるCa2+濃度が減少し発揮張力が低下しました。つまり、高頻度刺激の持続的な収縮は、高頻度疲労を誘発しやすいということです。ちなみに、低頻度(20Hz)の場合には、30秒間刺激してもCa2+濃度は一定だったそうです。まとめると、100Hzの方が疲労はしやすいですが、持続時間を10秒以下にすることで、疲労を防ぎつつ負荷強度を高めることができます。

運動感覚興奮連関のところですが、なぜ感覚刺激が入力されることで運動野は興奮するのでしょうか?

一次感覚野(S1)に入った感覚情報は、高次感覚野や頭頂連合野でさらに統合・解析され、「身体のどの部分がどのように動いているか」「外界でどのようなことが起きているか」といった意味づけや空間情報の処理が行われます。統合・解析された感覚情報は、高次運動野(補足運動野、運動前野など)に伝わります。これらの領域では「どのタイミングで、どの筋肉をどれくらい使って動作を起こすか」といった運動のプランニングが進められます。運動プランが立てられると、最終的には一次運動野(M1)に指令が送られ、ここから具体的な運動出力が開始されます。M1に投射する経路には、感覚情報がフィードバックとして常に入り込み、正確な運動指令が生成されるように働きます。この結果、感覚刺激が入力された時点で、必要に応じてM1の神経細胞が興奮します。この内容に関しては介入研究でも報告されています。また、S1からも皮質脊髄路が起始しているのも要因かと思います。

NMESとEMSって何が違いますか? EMSの中にNMESが含まれるという解釈でよろしいですか?エスパージは機器にEMSとありますが、リハ界隈的にも後輩に説明する時はNMESと表現するようにしています。

その解釈でよろしいかと思います。もう少し詳しくお話しすると「EMS(Electrical Muscle Stimulation)」は“筋肉を電気刺激する”という大きな概念を指すことが多く、「NMES(神経筋電気刺激療法)」は、神経と筋肉の機能的なリハビリにフォーカスしているものを指します。つまり、EMSは一般向けでフィットネスや美容の目的も含んでいます。一方、NMESは機能回復などの治療目的で使用する電気刺激を指しているところに違いがあります。予防や維持目的ならEMSでもいいかもしれませんが、病院などで勤務する僕らセラピストが使用する場合は、NMESで統一した方が良いかもしれませんね。

パルス幅のµsは秒にすると何秒になりますか?

1µs=0.000001秒になります。例としてよく使用される300µsは0.0003秒になります。具体的な例としてNMESなどで使用される「パルス幅:300μs、周波数:20Hz」の設定の場合、1秒間でのトータル通電時間は0.006秒(0.0003×20)ということになります。

スクレロトームについての活用方法も知りたいです。

疼痛の原因組織が、骨関節系(骨や滑膜、関節包、靭帯など)である場合に、疼痛の髄節レベルとスクレロトームの分節領域を適応させて使用します。しかし、脳卒中での使用頻度としてはあまり多くありませんので、デルマトームの方が使用するかと思います。考え方はスクレロトームの領域と一致する皮膚領域に電極を貼付して同髄節への感覚入力を行なっていくイメージです。

回復期に勤めています。電気の反応が乏しく刺激強度をあげると痛みが出てしまう患者様がいます。どのように対処したらいいでしょうか?

発症から時間が経っていると、思ったような反応が得られないこともあります。理由はさまざまありますが、一つに廃用などにより神経筋接合部の機能が低下していることが考えられます。神経筋接合部の機能は電気刺激療法を行うことで改善していく可能性があるとも言われていますので、長い目でみながらアプローチしていただければと思います。

麻痺側上肢で浮腫みのある患者様に対し電気刺激で改善させることは可能でしょうか?

浮腫の原因にもよりますが、麻痺側上肢の場合は重度運動麻痺による不活動やポジショニング不良によるものが多いように感じます。その為、電気刺激による筋収縮や関節運動による「筋ポンプ」作用での静脈環流量を促すことが効果的だと考えます。 浮腫みがある場合、皮膚が危弱であったり皮膚抵抗が大きくなっていることがあります。電極の粘着性が高すぎないものを選ぶことや貼付前の皮膚の清拭、パラメーターの設定(周波数を高くする、パルス幅を短くする)によるインピーダンスの軽減などの対策をし、患者様の不快感を可能な限り軽減する工夫も同時に行えると良いと思います。

IVESにて僧帽筋の上部、中部、下部に電気刺激を行う目的を教えて頂きたいです

僧帽筋上部

僧帽筋上部に関しては、メインで貼付することは少ないです。棘上筋に貼付するためには僧帽筋上部にも貼付するしかないため、貼付しているイメージです。まれに、随意運動が全く見られない方の行為主体感を促す目的で運動が認めやすい僧帽筋上部へ電気刺激を実施して肩甲帯の挙上を行うこともあります。

僧帽筋中部・下部

翼状肩甲の改善目的や、上肢挙上時の協調的な運動を促す目的で電気刺激を行います。特に僧帽筋中部は菱形筋への刺激も合わせて行なっています。僧帽筋下部に関しては、上肢の最大前方挙上を促す際に、棘下筋と合わせて橈骨神経を行うことがあります。

IVES®︎とNMF-1が職場にあります。どのように使い分ければいいのでしょうか?

IVES®︎の強みはEMGを検出して電気刺激を行うIVES(パワーアシストモード)が実施できるところだと思います。筋活動をベースにした電気刺激療法で随意運動を促したい場合には現状「IVES®︎」一択になってしまいます(ロボット療法で筋活動を検出して運動をサポートするものはありますが、電気刺激ではIVES®︎以外にメジャーなものはないかと思います)。一方、IVES®︎にはパルス幅を変更できない(IVES Proは変更可能)というデメリットもあります。そのため、細かな刺激パラメータの調整が行いたい場面には対応できせん。その際には、NMF -1などのパルス幅の調整が行える電気治療器が必要になるかと思います。

抗重力位では肩外転90度、従重力位では140度程度まで運動可能、三角筋後部辺りに疼痛を認めます。どういう介入をしていくと改善されますか?

ご質問ありがとうございます!

肩関節の介入って、臨床でも本当に難しいですよね、、同じように悩む方は多いと思います。

一般的に考えられる原因としては、

  • 肩甲上腕リズムの破綻(肩甲骨の動きが少ないとインピンジメントにつながりやすい)
  • 外転90°付近で関与しやすい制限因子(棘下筋・小円筋・後関節包など)
  • 三角筋後部が優位になって、インナーマッスルの求心位保持が不十分になるケース

などが挙げられます。

ただ、この情報だけだと具体的な介入までは判断が難しいので、

例えば「疾患名(脳卒中に限る)」「発症からの期間」「運動機能の詳細」「疼痛が出る動作や姿勢」「肩甲骨の動き」「制限の感触(硬さなのか、痛みなのか)」など、もう少し詳しく教えていただけると、より的確にお伝えできると思います!

(脳卒中)上肢中枢部の疼痛の原因を評価する方法が分かりません。まずどこから評価していけばよいでしょうか?

良いご質問ですね!

脳卒中後の上肢近位部の疼痛はとても多因子的なので、「まずどこから評価するか」を整理すると分かりやすくなります。僕なら以下のステップで見ていきます👇

① 疼痛のタイプを大きく分類

  • 末梢性の要因(関節・筋・靱帯など)か
  • 中枢性の要因(感覚路や基底核・視床などの損傷に伴う中枢性疼痛)か まずはここを意識して区別します。

② 関節・筋骨格系の評価

  • 肩関節の構造と制限因子を確認(関節包、靱帯、インナーマッスルなど)
  • 肩甲上腕リズムが破綻していないか(肩甲骨の動き vs 上腕骨の動き)
  • ストレステストや徒手によるインピンジメント徴候を確認

③ 神経学的な評価

  • 痙縮や異常筋緊張による疼痛かどうか(特に三角筋や大胸筋の過緊張)
  • 感覚障害の有無(触覚・温度覚・深部感覚)を確認し、視床や放線冠レベルの損傷による中枢性疼痛の可能性も考慮

④ 脳画像との照合

  • 視床VPL・Vimや内包後脚、被殻などは中枢性疼痛と関連しやすい部位です
  • 脳画像で「痛みを説明できる病巣があるか」を確認することも有用です。

まとめると「肩関節などの構造的評価 → 筋緊張・痙縮の評価 → 感覚障害・中枢性疼痛の評価 → 脳画像との照合」の順で進めると原因が整理しやすいです!

ラジオでも解説しています↓

脳卒中上肢中枢部の疼痛をどう評価するか? – サギョウ先生の臨床ラジオ | stand.fm

より具体的な方法はこちらで解説↓

臨床ノオト|脳卒中上肢中枢部の疼痛をどう評価するか?具体的方法 – サギョウ先生の臨床ラジオ | stand.fm

リスク管理・禁忌等

サギョウ先生

主にリスク管理や禁忌に関する質問(インプラントやがんなど)です

点滴加療により静脈炎が起こっている方への電気刺激療法は可能でしょうか?

基本的には皮膚の炎症と同様に避けた方が良いかと思います。ただし、医師の許可を得た場合には例外になるかと思います。その際は、対象者に状態を確認しながら行ってください。

心電図をつけている患者さんへの電気刺激療法は可能でしょうか?

禁止ではありませんが、電気信号が乱れてしまう場合がありますので、医師や看護師と相談のもと実施してください。もし、心疾患を持たれている場合には、禁忌となる場合もありますので、必ず医師へ相談してください。

インプラントなどがある部位に対する電気刺激についての見解を教えてください。

一般的な電気刺激療法の禁忌や主治医の見解に従っています。例えば、僕の所属先ではペースメーカーに関しては一切の電気刺激療法が禁止(上下肢ともに)となっていますが、シャントバルブに関して走行上に電流を流さなければ可能となっています。また、人口関節などに関しては、本人の違和感などがない場合には電極を貼付することもあります。いずれにしても、一般的な禁忌(電気治療器の説明書や参考書など)や主治医および各施設の基準に従うのが良いかと思います。

炎症部位や腫瘍について、患部から離れた部位なら実施しても良いですか?

参考書などで禁忌を確認しても直接的な貼付を禁忌としていることが多いです。僕の所属先も直接的な貼付でなければ実施することがあります。しかし、これらの判断は最終的に主治医との相談のもと行ってください。もし、心配の場合には、使用している電気治療器のメーカーに問い合わせるのもオススメです。

電気刺激の注意点の資料で、感覚レベルと運動レベルで分かれているのはどちらにアプローチするか?の注意点ということでしょうか?

電気刺激療法実施時の禁忌や注意点は刺激強度によって変化します。大きく分けると、刺激強度が運動閾値より下の強度(感覚のみ感じる感覚レベル)か、刺激強度が運動閾値よりも上の強度(筋収縮が生じる運動レベル)かによって変わります。アプローチの目的が同じであっても、刺激強度によって適応が変化することがある為、しっかりと把握しておくことが重要となります。

禁忌・注意に感覚障害が含まれていますが、運動麻痺と感覚障害がある方に実施する場合、設定をどう調整すれば良いでしょうか?

パラメータに関しては、何を目的としているかによって変わるかと思いますが、感覚障害がある患者様の場合には、非麻痺側での感覚閾値から運動閾値までの刺激強度を参考に、麻痺側でも同様に設定するのが良いかと思います。また、運動閾値以下で収まるように、筋収縮が起きているかどうかを触診しながら確認しています。

既往に癌がある患者様の物理療法の使用に関し日々悩むことがあります。部位的に禁忌と書かれる論文もありながら、禁忌とだけ記される論文もあって..影響ない範囲内の部位にて、医師の許可があっても不安はあります。有効さがあるからこそ尚更迷います。

電気刺激ががん細胞の浸潤や成長を早める可能性が指摘されていますが、強いエビデンスなどは現状見つかっていない様です。ただ、一般的には腫瘍部位への直接貼付は禁忌とされることが多くありますね。一方、TENSに関してがんによる疼痛緩和に関して効果的という報告もありますので、専門医との相談が必要になりますね。

整形のオペ歴があり髄内釘などある場合も使えるのか?

禁忌として記載はされていないかと思います。当院でも、人工関節がある方に対しては、本人の違和感などがない場合には電極を貼付することもあります。ただ、お使いの治療機器の説明書や主治医および各施設の基準に従うのが良いかと思います。

電気刺激療法は透析を行ってる方でも可能ですか?

先行研究では透析患者さんに対する電気刺激療法(主にNMES)の報告がいくつかありますので、理論上は可能かと思います。しかし、その他の合併症や疲労などに考慮しつつ、最終的な判断は医師に相談するべきかと思います。

電気刺激の導入や終了

サギョウ先生

電気刺激を導入する際の注意点や終了する際の工夫などです

電気刺激療法の機器は導入しており、使用もしていますが、開始が分かっても終了が分からなかったり、患者さんの電気刺激に対する信頼を高めて終了しにくくなったりといった問題が当院で散見されます。

明確な基準はないかと思いますが、個人的には、電気刺激療法を利用する目的によって、その目的が電気刺激がなくても達成された場合に終了していくことが多いです。また、電気刺激療法を導入する際に、患者様本人にいずれ終了するものだということは伝えています。

電気刺激療法の開始と終了のタイミングについて教えていただきたいです。

開始に関しましては、禁忌事項に触れていなければ導入が早い方が良好な成績が出るとの報告がありますので、より早期からの導入が良いかと思います。終了に関しましては明確な基準はないかと思います。個人的には、電気刺激療法を利用する目的によって、その目的が電気刺激がなくても達成された場合に終了していくことが多いです。また、電気刺激療法を導入する際に、患者様本人にいずれ終了するものだということは伝えています。

当院では、とりあえず電気を当ててるだけが目立ちます。電気刺激中は、どのような声かけなどしていますか?

IVESのパワーアシストモードの際にはEMGランプを見ながら、ランプが光るように声掛けをし、その程度によってフィードバックを行なっています。その他、電気刺激が流れている筋肉に意識を向けるような声掛けもおこなっています。

実際に調整しても、弛緩している上肢に電気刺激を当てる際に意識していること(予後や目標)などあれば教えて頂きたいです。

設定など以外に意識していることについて1例を記載させて頂きます。「実際の収縮が得られていなくても大脳皮質には影響がある可能性がある」「神経筋接合部の機能低下を防ぐ」「筋自体の変性を防ぐ」などを意識しています。もちろん病巣や症状によって、予後は変わってきますが、もし皮質脊髄路などの興奮性が高まった際に、反応しやすい効果器を維持するということは急性期として意識しています。

電気治療器はありますが、どのレベルの症状の人のどんな時期にどのぐらい使えば効果があるのか、また、もし上肢の随意性が出てきた時にはそれは電気治療を行ったことが効果として出ているのかわからなくて使えていないです。

電気刺激の効果に関しては、ガイドラインやさまざまな書籍・論文で報告されています。電気刺激の効果か否かに関しては、fMRIやDTT、脳波などの高度の検査などを用いても断言はできませんが、これはその他の療法に関しても同じことが言えるかとおもいます。

IVESの終了時期(重度上肢麻)を悩むことが多いです。電気の依存にならないような、上手な勧め方などを教えてください。

個人的には、電気刺激療法を導入する際に、患者様本人にいずれ終了するものだということは伝えています。(「自転車の補助輪の様なイメージです」と伝えるとわかりやすいと言ってもらえることが多いです)また、患者様の理解力にもよるかとは思いますが、電気刺激療法の効果と限界を事前に伝え、一般的な介入期間を経過しても効果が出なかった場合には、電気刺激療法が適応にならない可能性があることをお伝えしています。その代わり、その他の物理療法やリハビリについても説明しています。

電気刺激療法の介入は早ければ早い方が良いのでしょうか??

開始に関しましては、禁忌事項に触れていなければ導入が早い方が良好な成績が出るとの報告がありますので、より早期からの導入が良いかと思います。むしろ、FESの限界として、介入時期が遅いと有意な効果は認められなかったとされています。

慢性期の病院に勤務しており脳血管疾患の患者様も多数いますが、専門医がおらず電気刺激療法を活用するスタッフもほぼいない環境です。IVESはあります。電気刺激療法を取り入れたいと感じましたが、主治医への相談や他スタッフへの浸透を図るためのポイントがあればお聞きしたいです。

そう思っていただけて光栄です。僕が勤務先に電気治療器を導入した際は、デモ器をレンタルし、直接スタッフや医師に触っていただき、効果を実感していただきました。正直、メカニズムやエビデンスだけでは浸透が図れず、電気治療器に対する抵抗感の軽減や、電気刺激療法を使用することで楽になる点(アプローチに悩まないなど)などをアピールしました。興味を持ってもらったら知識的な内容の勉強会などを行いました。

パラメータ関連

サギョウ先生

パラメータに関する質問です

周波数やパルス幅、刺激強度のどのパラメータから調節するのが良いでしょうか?

刺激強度(mA)かと思います。周波数やパルス幅に関しては目的によって概ね決まってくると思います(例:筋力強化→NMES=30Hzまたは50Hz、300μs)ので、刺激強度が最も規定が少なく変更しやすいパラメータになるかと思います。2番目は周波数(Hz)かと思います。パルス幅を変更できない機種もありますので。

当院でも電気刺激療法を用いたりしますが、どれぐらいの負荷、頻度(訓練の反復回数など)は手探りの状態です。何か指標があれば教えていただきたいです。

目的によっても変わるので、詳細な内容は資料でご確認ください。大まかなイメージとしては、筋力向上や運動麻痺に対する電気刺激は、運動閾値の刺激をオン5秒:オフ10秒で設定し、1日30分、週3回以上実施している報告が多いです。感覚障害に対しては、感覚閾値の刺激を持続的に30分〜2時間と長時間刺激する報告が多いです。

ガイドラインで電気治療器の有用性についてかかれていますが実際にどこの筋肉にどのくらいの出力でどのくらいの時間流すなどがわからず使用できておりません。治療理論と一緒に具体例などと一緒に教えていただきたいです。

様々な目的で使用されていますが、ガイドラインですと亜脱臼に対する介入などが記載されています。この場合は、棘上筋と三角筋後部に、運動閾値(最大許容範囲内)、オン2~5秒⇔オフ5~10秒、1日30分などの設定が多いかと思います。資料にはその他の具体例(システマティックレビューを含む)も記載しています。

最適なパルス幅の合わせ方がわかりません。筋収縮が得られない場合、パルス幅を増大させて対応するという文を読んだのですが、麻痺が重度な患者様にESPURGEを使用する場合はEMSではなく、TENSでパルス幅を大きくする必要があるのでしょうか。

パラメータの設定ではやはり、S-D曲線を参考にするのが良いかと思います。一般的には、パルス幅を長くすることで筋収縮を促しやすくなります。一方で痛みが強くなる可能性もありますので、注意も必要です。ESPURGEに関してはデモ機でしか使用したことがなく、具体的なモードなどに関してはお伝えすることができません。今後、導入できた場合には、資料や動画などで解説させて頂ければと思います。

周波数に関して質問です。NMESを実施していく際に周波数の設定として赤筋(大腿部など大きい筋)は低い周波数、白筋(前腕部など細かい筋肉)は高い周波数で刺激しやすいという論文を読んだことがあり、意識してパラメーターを調整しているのですがその良し悪しの判定はどの様にすればよいか悩みます。今は患者さんの反応や主観的な意見を参考にしていますが、信憑性に欠けるため何かいい方法やご意見あれば伺いたいです。

高周波による電気刺激はよりTypeⅡ線維を選択的に治療が可能と報告されていましたが、近年の報告では、電気刺激による筋収縮は運動単位の動員順序が比較的ランダムであったと報告されています。電気刺激において周波数が高いほど筋疲労や疼痛を誘発する原因となりうる為、対象者の内省をしっかり聴取し不快感がない様に調整するがことが重要であると感じます。また、介入の際に筋電図を使用したバイオフィードバックなどを併用しつつ実施することで、パラメーターの変化によって運動がどのように変化しているのかを確認することが可能であると考えます。

最近資料を確認しながら電気治療器を使用しているのですが、ON/OFF時間の調節が上手く出来ず、物品操作などでしたい動きの邪魔をする形で電気が働いてしまうようなことがありました。動作のタイミングと電気の時間を調節するコツを教えていただきたいです。

ご質問ありがとうございます!僕が行っている方法は大きく2つありまして、①地道に時間を測って調節する、②外部機器(スイッチなど)を使うになります。③ここに加えてオリジナルの方法を考えましたのでこちらも共有いたします。

①に関しては対象者の動作を何度も確認し(必要応じて動作撮影やタイム測定をする)、ご本人の最も平均的なタイミングに合わせてオープンループFESシステムを行う必要があります。②ESPURGEやDRIVEなどのスイッチついているものスイッチを使うことをおすすめします。また、IVES®︎の場合にはFEEやフットスイッチを応用する方法もあります。さて、僕が発見した(自称:すでにやられている方がいる場合にはスイマセン!)③についてです!現状IVES®︎でしか行えませんが、外部アシストモードを使用する方法があります。詳しくは、ラジオにて解説しましたのでそちらを参考にしていただきたいのですが、EMGを検出する方のチャンネルをセラピストに貼る方法です(一般的には対象者の非麻痺側に貼付します)!これによって、セラピストが対象者の運動に合わせて電気を送ることができる(強弱の調整も可能)のでかなり実践的な方法かと思います!もし実践する機会があればご感想を教えてください!!!

⬇️このラジオで解説しています!

stand.fm
【臨床ノオト】(個人的に)新しい電気刺激の方法を思いつきました! - サギョウ先生の臨床ラジオ | stand.... 一般放送では、僕らRe:Gakusyaの想いや現在の立ち位置の共有、臨床での気づきなどについてお話します! 医学的な内容はかなり少ないと思いますがご容赦ください! メンバー...
過敏な対象者への対応について先生の方法は大変参考にさせて貰っています。これまでの対応に加えて、機器にエラーが表示される場合や疼痛などで上手く行えない場合、自分は以下の方法を行う場合があります。 例1)30Hz 30mAでエラー→同Hz 29mAで数分後、徐々にmAを上げる •これはいわゆる皮膚や神経の適応反応と捉えています。 例2)30Hz 30mAで疼痛→50Hz 同mAで刺激→30Hz 30mAで刺激 •とくに感覚が過敏な人に対してインピーダンスの低い高Hzから徐々に慣れて頂くことでの不快刺激が軽減すると思ってます。 他にも筋収縮が上手く出ない場合、10Hz以下で刺激してから30-40Hzで実施したりもしています。 もちろん、パルス幅も調整していますが、このようなmAとHzの調整に関して先生はどのようにお考えですか?科学的、臨床的な知見で教えて頂きたいです。

とても素敵な知見を共有いただきありがとうございます。

おっしゃる通り、mAを最初から目的値に設定するのではなく、低めの電流から徐々に上げていく方法は、神経や皮膚の「馴化」や「適応」といった生理的反応を利用しており、反復刺激によって感覚神経の閾値が上昇したり、皮膚の電気抵抗が低下したりすることで、不快感の軽減が期待されます。

また、30Hzの刺激で痛みを訴える対象者に対して、あえて一時的に50Hzのような高周波刺激を与えてから再び30Hzに戻すという方法も、皮膚インピーダンスが高Hzで低下しやすいことや、脊髄後角の抑制性神経回路が活性化されやすいという点から理にかなっています。個人的には100Hzから始める場合もあります。これにより、痛覚過敏に対するゲートコントロール機構が働き、不快感が緩和される可能性もあります。

加えて、低周波TENSから実施し、下行性疼痛抑制系を促進してから本刺激へ移行するケースもあります。

また、筋収縮が出にくいケースでは、まず10Hz以下の低周波で単収縮を引き出してから30~40Hzに移行することで、筋や腱の感受性が高まり、運動単位の動員(特に速筋線維)がスムーズに起こるようになるという考え方もあります。

パルス幅、パルス間隔、周波数に関して、周波数を上げると、パルス幅とパルス間隔は短くなるということであっていますか?

周波数を上げることで、「1秒間あたりのパルスの数」が増えるため、パルス間隔は相対的に短くなります。ただし、パルス幅は周波数とは独立して設定される項目ですので、自動的に短くなるわけではありません

電極の貼付について

サギョウ先生

電極パッドの貼付・モーターポイントについての質問です

亜脱臼に対して棘上筋に貼付する際の貼り方のポイントはありますか?

棘上筋は僧帽筋上部の深層にありますので、僧帽筋上部が最も薄く、肩峰と鎖骨の間にできる窪み(この窪みの下に棘上筋が走行しています)を目指して貼付することが多いです。また、電流を流した際に動作の確認も必要になります。

棘上筋などインナーの筋肉に刺激を入れたい場合の貼付の仕方などのポイントはありますか?

基本的に深層筋のみを刺激する貼付は難しいとは思います。ただ、その中でも、表層筋が薄くなる部位(筋腱移行部など)に貼付することが多いです。また、電極間の距離を広くすることで、電流は深部を流れますので、双電極法を試すのも良いかと思います。その他に電極パッドのサイズを小さくすることで電流密度が高まりますので、より深部に電流を流すことが可能になる場合がありますが、その際は痛みに注意が必要です。

手内在筋のモーターポイントへのアプローチは難しいです、、、その際は極小サイズの電極パッドを使用することもあります。

手内在筋のモーターポイントへのアプローチは難しいです、、、その際は極小サイズの電極パッドを使用することもあります。

長期間収縮していない(廃用・萎縮)筋に対してNMESを行う際に、運動閾値に達してもほとんど収縮が得られなかったりモーターポイントが全然見つけられない場合はどうすれば良いですか?

長期的な廃用がある場合、筋線維自体の変性や神経筋接合部の機能低下などが考えられます。病巣にもよるかとは思いますが、個人的には感覚閾値での電気刺激(TENSやPNS)をまずは実施し、大脳皮質への効果を期待しつつ、ミラーセラピーなどの運動イメージを促す練習をプランに入れるかと思います。また、運動閾値でのNMESでも様々な回復メカニズムを促す可能性がありますので、筋収縮が見られなくても実施する場合もあります。一方で、慢性期からのFESなどでは効果が得られにくいとの報告もありますので、電気刺激療法以外のアプローチの併用も視野に入れるのが良いかと思います。

電極の貼付場所に関して質問です。IVESを使用する際、モーターポイントには二極(赤・黄)パッドと単極(青)パッドのどちらを貼付するのが良いですか?また、二極パッドをモーターポイントに貼付した際には、単極パッドはどこに貼付するべきか何か基準はありますか?

二極パッドは筋電を拾うために必要なパッドになります。ですので、パワーアシストモードや外部アシストモードなどの筋電を活用したモードでは二極パッドを目的としている筋のモーターポイントに貼付するのが一般的かと思います。一方で、筋電を活用しないノーマルモードなどに関してはどちらのパッドをモーターポイントに貼付しても大丈夫です。モーターポイントに二極パッドを貼付した際には、同筋の筋腹のどこかに単極パッドを貼付するのが良いかと思います。基本的に電気刺激の対象は神経または神経筋接合部になりますので、腱などに貼付することは一般的ではありません。筋肉が小さく片方の電極パッドしか貼付ができない場合には同じ作用の筋(例:棘上筋と三角筋)にもう片方の電極パッドを貼付することもあります。

各電気刺激療法の詳細

サギョウ先生

各分類に対する質問(TENS・NMES・FESなど)です

TENSの上肢機能に対する介入として、100Hz 200μs運動値以下を紹介されてました。いわゆるPSSの一種であるとは思いますが、この研究では対象が中等度麻痺であったからですかね?ある程度、高パルスの方がlaを賦活できると聞いたこともあり、PSSではHZは低くパルスは高くを意識しています。ただ、尺骨や正中Nにする場合が多いです。紹介されていた方法も麻痺の程度や状況に合わせて参考にさせていただきます。PSSの知見についても教えていただきたいです。

散見される論文では、高頻度TENSを実施する際は運動神経が動員されにくいようにパルス幅を下げる傾向があるように感じます。1~5Hzの低周波TENSに対して、作業療法や上肢機能練習を併用した介入報告もある為、どちらでも介入効果は期待できるのではないかと考えます。今回紹介した報告では、あくまでも高周波TENSに課題指向型練習を併用した報告であった為、高周波TENSの先行研究をもとにパラメーター設定を行っていた可能性があると考えられます。

PNSの場合は、先行研究でも1msと比較的長いパルス幅で行っているものが多い為、「Hzは低く・パルスは長く」を意識した介入は非常に良いと考えます。

TENSの活用の仕方がいまいち自信がありません。ESPURGEで、痙縮筋、疼痛部位に貼付することはありますが、随意性向上を目的に貼付することはありますか?

TENSの効果として、半球間抑制の是正や皮質内抑制の是正などが挙げられています。また、感覚運動皮質の活動性が向上し運動機能が改善する可能性(運動感覚興奮連関)が示唆されています。これらの報告は、TENSのみを実施するというよりは、課題指向型練習と併用して実施することでより効果的とされています。

IVESは重症例には使えないとあったが、重症の運動機能障害に使うにはどれがいいのか教えて下さい。

電気刺激療法としてのIVES(パワーアシストモード)は筋電図が検出できない場合は適応外となりますが、治療機器としてのIVES®︎はノーマルモードや外部アシストモードなどがありますので、重症例の場合にはそれらのモードを使用するのが良いかと思います。

TENSの鎮痛メカニズムを教えてください

TENSは周波数によって鎮痛効果のメカニズムが変化するため、使用目的に応じて使い分けることを推奨します。

・低頻度TENS:2〜10Hz前後→内因性オピオイド系や皮質レベルでの鎮痛メカニズムが報告されており、疼痛部位以外の貼付であっても効果ができる。

・高頻度TENS:50〜100Hz→ゲートコントロール理論や局所性ブロックを中心とした鎮痛メカニズムであり、対象部位への貼付において高い鎮痛効果が得られる。

TENSにおいては変調効果を持たせることで「順応」を予防することができます。変調には刺激強度・周波数・パルス幅を変化させる3つの方法があります。お持ちの治療機器で変調できる箇所を設定するのが良いかと思います。また、2チャンネルある場合には、低頻度TENSと高頻度TENSを同デルマトーム上の貼付するのが良いかと思います。

バースト波や変調モードを使ったことがありません。TENSに対して順応を感じたら、使い始めるイメージで良いでしょうか?

そのように活用していただくのも良いと思います。ただ、私は個人的に、最初から順応を予防する目的で“変調”を使用することが多いです。順応は個人差があるため、利用者の反応に応じて調整してみてください。

過敏な対象者への対応

サギョウ先生

電気刺激に過敏な対象者への工夫などです

痛みに過敏な対象者にはどうしたらいいですか?

いくつか方法がありますので、反応が良いものを試してみてください。

①立ち上がり・立ち下がり、または、ランプアップ・ランプダウンなどを設定し、ゆっくり刺激が入るように調整する。

②周波数(パルス幅を変更できるものはパルス幅も)を低くする。

③初めは見える部位(前腕など)でコミュニケーションを取りながら行う。

④痛みが出ない刺激強度で、目的の筋の主動作を繰り返す。

⑤電極を新しくする。

⑥貼付位置を変更する。腱の近くに貼付すると疼痛が強い場合があるので、位置を変更し、筋腹または神経の上に貼付してみてください。

これら以外にも方法はあるかも知れませんが、僕らの経験上①~⑤のどれかまたは何個かを行えば徐々に目的の電気刺激が行えるようになる印象です!大切なことは、痛みを伴ってまで理想のパラメータにするのではなく、対象者が電気刺激に慣れるまでは本人の許容範囲内に留めておくことだと思います。

筋萎縮や感覚障害がある場合は、特に刺激に敏感となりやすく(筋萎縮が重度であれば抵抗組織が少ない、感覚障害や感覚閾値を感じにくく運動や疼痛閾値に達しやすい?)導入に難渋するケースがありますが、まずは見えるところからは勉強になりました。ほかに何か工夫点がありましたら教えていただきたいです。

電気刺激を行う上では、刺激を開始する操作は患者様に見える場所で行います。刺激強度のダイヤルを本人に回してもらうこともあります。その他、IVESの場合には外部アシストモードなどを用いて、非麻痺側の随意的な運動をスイッチにすることもあります。その他には、パラメータの調整としてランプアップ・ランプダウンの時間を長めに設定するなどの工夫をしています。また、理解が良好な患者様にはS-D曲線を見せて事前に説明することもあります。

視床痛があって軽く触れるだけでも強い痛みを感じてしまうため試せずにいます、このような場合の対処法等ありますでしょうか。

電気刺激に過敏な方に対する、いくつか例を上げさせていただきます。ただ、視床痛に対する報告は少なく以下の方法が効果的かはなんといえませんので予めご理解ください。

①電気刺激を開始する操作は患者様に見える場所で行う。
②刺激強度のダイヤルを本人に回してもらう。
③IVESの場合には外部アシストモードなどを用いて、非麻痺側の随意的な運動をスイッチにする。
④パラメータの調整としてランプアップ・ランプダウンの時間を長めに設定する。
⑤TENSに関しては、下行性疼痛抑制系の促進を目的に低周波高強度TENSを実施する。
⑥理解が良好な患者様にはS-D曲線を見せて事前に説明する。

これらでも介入が困難な場合には、電気刺激療法が適応外となることもあります。

疼痛が出た場合は即座に中止すべきですか?麻痺のある患者さんの場合は、かなり周波数などが上がるのでは無いかと思うのですが、それでも問題ないのでしょうか?

中止というよりは刺激強度などのパラメータを再調整するべきかと思います。一般的な報告では、目的によって周波数は異なりますが、上肢の場合20〜50Hzかと思います。それ以上の周波数になると筋疲労も早くなりますので、オンオフ時間などの調整や刺激(刺激強度・パルス幅・傾き)の調整が必要になるかと思います。

ここまでのQ&A以外の方法で疼痛をへの対処法を教えてください。

①始めに低頻度TENSにて鎮痛を図る(非麻痺側への貼付)
②対側支配性FESを用いて行為主体感を促す

この2つになります。これは僕が最近行う方法なんですが、これまでに載っている方法を試しても効果が少なかった方に対して効果的でした。ぜひ試してみてください!

運動麻痺への対応

サギョウ先生

運動麻痺への介入についての質問です

長期間収縮していない(廃用・萎縮)筋に対してNMESを行う際に、運動閾値に達してもほとんど収縮が得られなかったりモーターポイントが全然見つけられない場合はどうすれば良いですか?

長期的な廃用がある場合、筋線維自体の変性や神経筋接合部の機能低下などが考えられます。病巣にもよるかとは思いますが、個人的には感覚閾値での電気刺激(TENSやPNS)をまずは実施し、大脳皮質への効果を期待しつつ、ミラーセラピーなどの運動イメージを促す練習をプランに入れるかと思います。また、運動閾値でのNMESでも様々な回復メカニズムを促す可能性がありますので、筋収縮が見られなくても実施する場合もあります。一方で、慢性期からのFESなどでは効果が得られにくいとの報告もありますので、電気刺激療法以外のアプローチの併用も視野に入れるのが良いかと思います。

運動麻痺の回復を目的とした場合は、TENSとIVESどちらの使用頻度が多いですか?

どちらも同等かと思います。と言いますのも、それぞれを利用する際の運動麻痺の程度が違うからです。あくまでも一例ですが、重度運動麻痺ではFES or NMES、中等度運動麻痺ではIVES、軽度運動麻痺ではTENS(PNS)の使用頻度が高まることが多いです。もちろん、その他の合併症や電気刺激への反応などによって異なりますが、運動麻痺の程度に合わせて使用頻度が変わってくるかと思います。

弛緩性麻痺の方にノーマルモードで刺激する場合、FEEで実施する場合が多いでしょうか?それともパッドで実施することが多いでしょうか?

亜脱臼に対しての本邦の報告では、FEEを用いたものがあります。ただ、個人的には、介入時間の制限もありますので、パッドでの電気刺激を行いつつ起立練習やADLを並行して実施することがあります。

弛緩性麻痺の方にノーマルモードで刺激している際に筋肉の収縮が確認できない場合があるのですが、そのような場合はどういう対応をしていますか?

個人的な対応方法としては、周波数または刺激強度の調整(パルス幅が変えれるものはパルス幅)や、パッドを圧迫ししっかりと密着させる、電極パッドのサイズを変更する、貼付位置を変更するなどを対応をすることが多いです。しかし、発症からの経過が長く、筋線維自体の変性や神経筋接合部の機能低下、運動単位の低下などが考えられる場合には、電気刺激のみでの対応が難しくなることもあります。

自発的な収縮を認めない筋に対して、感覚閾値以上運動値以下の刺激強度で通電させることのメリットはありますか?

感覚閾値以上運動閾値以下の刺激に関しては、中等度〜軽度運動麻痺に対する報告が一般的かとは思います。一つ参考になるものとしましては、TENSの効果として、半球間抑制の是正や皮質内抑制の是正などが挙げられていますので、全く意味がないかというわけではなさそうかと思います。

随意性の低下が著しく、全般的に筋出力が出せない方には、どこの筋から狙って電気療法を実施していくと改善が図りやすいですか?今までの経験や肌感でもいいので、教えてほしいです。

改善が図りやすいかはなんとも言えませんが、合併症予防などの目的もあり、優先的に介入している筋は棘上筋と三角筋後部です。亜脱臼予防は早期から行うべき介入かと思っています。

動画でありましたFESの一例で肩甲帯の安定を図っていましたが活用した治療器具はIVESでしょうか。また、貼付が全部で4か所ですが治療器具は2台活用しているのでしょうか。

使用している治療器は、ECサイトで一般的に販売されている電気治療器になります。1台に2チャンネルついています。ただ、こちらの治療器は、医療機器認定されているものではなにので、あくまでも動画解説や練習用に使用しています。

普段の臨床の中で、三角筋などアウターマッスルの出力が向上し、腱板などのインナーマッスルの出力の向上が難しいことを経験します。アウターマッスルばかり過度に出力が上がってしまうとインピンジメントを引き起こす可能性もあり、サギョウ先生は普段どうアプローチをすすめていらっしゃるのか、ぜひご教示頂きたいです。

サイズの原理から推測するとアウターマッスルが収縮できているということは、インナーマッスルも収縮できる可能性が高いと思われます。つまり、皮質脊髄路の興奮性が低いわけではなく、運動制御が乏しいことが考えられます。その際は、肩甲帯の安定化を目的に僧帽筋(菱形筋)や肩甲上腕関節の安定化を目的に回旋筋腱板(棘上筋・棘下筋)へ電気刺激を行いながら、従重力位での練習(難易度設定によっては抗重力でも可)から行っています。

重度麻痺の人は経験から見るとほぼ廃用手、よくて補助手レベルで頭打ちになってしまう。効果を出すポイントがあれば知りたい。

重度運動障害が何が要因で起こっているかなどを脳画像などのデータを元に推測する必要があることが大前提ですが、もし、一次運動野または皮質脊髄路の損傷によるものと仮定した場合のポイントを記載します。個人的に考えているポイントとしては、「合併症を予防する」「皮質への刺激を入力する」の2つをまず考えています。合併症予防の場合は、NMESにて様々な筋(特に肩周囲)の廃用を防ぐことを目的に促通反復療法などを併用しながら行います。皮質への入力としては、NMESやTENS・CCFESとミラーセラピーなどを併用して実施しています。ただ、電気刺激が最強というわけではありませんので、効果が出ない場合もあります。

重度麻痺患者に対して、IVESで50Hz、ノーマルモードで行うこともありますが、高齢者などで皮膚が薄い方や強度を強くしても筋収縮の反応が乏しい方には効果はないのでしょうか?

筋収縮が起きていない場合でも、感覚入力により大脳皮質への刺激は行えている可能性がありますので、効果がないというわけではなさそうです。一方で、筋萎縮予防や筋力増大を目的に実施している場合には効果が薄い可能性もあります。

脳卒中の患者様で重度上肢運動麻痺がある場合、運動機能を上げるためにNMESを使った方が良いのでしょうか、感覚機能を上げるためにTENSを使った方が良いのでしょうか?

どちらも行うのが良いかと思いますが、強いて言えば、筋萎縮予防も図ることができ、感覚入力も行えるNMESの方が使用頻度が高いかと思います。TENSに関しても、皮質内抑制の是正や半球間抑制抑制の是正などの効果が期待されますので、NMESでの反応が少なかった場合には試してみるのも良いかと思います!

上肢に対する電気治療(例:BRS上肢Ⅲレベル)の患者様に対して、肘関節と肩関節の関節運動に分離性を出して行きたい時に、使用している治療機器・種類が聞けると幸いです。

僕の勤務先にはある電気治療器はIVES®︎のみになります。種類としては、第一選択肢はパワーアシストモードです。電気刺激で運動を補助しつつ、EMGランプでのバイオフィードバックを用いることで運動学習が促進されやすくなっています。一方、パワーアシストモードが適切でない場合も存在します。原因として考えられるのは、患者様本人の筋活動を補助するように通電するので、本人の筋活動が持続できない場合、電気刺激も安定せず、途切れ途切れの筋収縮となってしまうということです。そのような場合には、ノーマルモードで感覚入力を目的とした電気刺激(PNS)を行うこともあります。

重度麻痺の方に電気刺激を使用する際は、当てている間ずっと電気刺激によって身体が動いている状態をみてもらいながらがいいのか、別のことをして見ていない状態では効果は違いが出るのでしょうか。また、どちらの方ががいいのでしょうか。

どちらの報告もありますので、どちらもオススメです。ただ、それぞれの目的を明確にすることで、目の前の患者様にはどちらが良いのかが決まるかと思います。例えば、身体所有感を意識してもらいたい場合には、実際の運動をみながら行うアプローチが有効になる可能性があります。一方、自分で動かしている感覚(運動主体感)や運動イメージを促したい場合には、ミラーセラピーなどを同時に行う方が有効になるかと思います。また患者様の感覚モダリティなどによっても視覚情報が優位なのか?固有感覚が優位なのか?などによっても効果は変わるかと思います。大切なのは、そのアプローチはどんな目的があって、自分は今何を促したいにか?を考えることかと思います。

上肢の筋萎縮に対しての電気刺激療法の方法の文献があまり見当たりません。脱神経筋であればみたことがあるのですが…。三角筋など萎縮を起こしたくない場合、どのように介入すればよいですか?これも10RMなど意識して、筋トレみたいな感じでやればよいでしょうか?

おっしゃる様に、上肢の文献はほとんどありません。ですので僕も下肢の内容を参考にパラメータなどを上肢に合うように設定しています。三角筋の場合は全ての線維ごとにNEMSを実施し、その際は、高周波高強度短時間を意識して刺激しています。ただ、データをとっているわけではありませんので、臨床的な肌感としての対応となります。

NMESは亜脱臼に対してはエビデンス的にも頻度や時間の目安がありますが、手関節や肩周りなどは明確なのは目にしません。基本は随意収縮が得られれば、別の訓練法に移行もしくは併用になるとは思いますが、例えばBRSⅠ〜Ⅱ程度であれば、どれくらいの頻度、時間で実施すれば良いですか?勝手に筋萎縮に対しては10分程度(5秒-5秒×10数回×3セット程度)皮質脊髄路の興奮性に対しては少し強度を弱めて30分程度って思ってます。また、NMESだけでは時間がもったいないので2チャンネルで例えば手と肩を同時に刺激とかも良いですかね?

臨床的なご質問をありがとうございます!NMESと明記された論文ではありませんが、筋運動が起きるレベルの電気刺激(運動閾値上の電気刺激)の研究では、20分・40分・60分で皮質脊髄路の興奮性に与える影響を比較したところ、20分・40分では皮質脊髄路の興奮性が増大しましたが、60分では興奮性がむしろ抑制されたようです。つまり、運動閾値での練習は保険下診療の持ち時間も考慮すると20分程度が妥当と思われます。しかし、この研究の対象者は若年健常者であり、対象とした筋は短母指外転筋ですので、手関節や肩周囲筋でも同じことが言えるかは疑問が残ります。ただ、この知見をもとに手関節や肩関節に対するNMESのシステマティックレビューなども確認すると、20〜30分を週4〜5回の頻度で行っている報告が多いので、あながち間違っていないのかもしれないというのが僕の感想です。実際僕も同様の時間行うことが多いです!筋萎縮に対するNMESについては僕の少ない知見では(症例報告レベルでの論文はあるかもしれませんが、、、)、今回のご質問に明確にお答えできる論文を見つけることができませんでした。しかし、僕個人としては、筋萎縮に対しても同様の設定で行なっております。理由としては、亜脱臼の改善等に向けた介入としてアウトカムにMMTやMI、握力などの筋力評価なども含まれており、慢性期を対象にした報告でも出力の向上を認めたとされているからです!2チャンネルを使う(僕の場合はIVES+とIVES)介入はよく行います!その他、電気刺激を行いながら起立練習やADL練習を行うなど時間を効率的に使う練習はおすすめです!

肩甲帯の安定化のためには、どのような電気刺激の貼付がおすすめですか?

まず第一に考えたいのは、肩甲胸郭関節の安定化を図ることです。いわゆる翼状肩甲になっていないかを評価します。安定化が乏しい場合には、僧帽筋中部(菱形筋)・下部に貼付します。次に考えたのは、肩甲上腕関節の安定化を図ることです。翼状肩甲が改善しているのに shrug sign が陽性の場合には、棘上筋と棘下筋へ貼付することが多いです。

BADの方で入院中麻痺悪化し、現在BRS:上肢Ⅲ、手指Ⅱの方がいます。発症後1ヶ月半〜2ヶ月経過しています。手指屈曲は少し認めるのですが手指伸展は筋収縮見られる程度です。 ①現在ESPURGEでリハビリ以外の自主練習の時間で総指伸筋を刺激してますが、ブロック操作をする際に、IVES®︎のノーマルモードを併用するか迷っています。何かいい方法はありますでしょうか? ②また手指屈筋群には、あまりつけるイメージはありませんが使用したことはありますか?

臨床的なご質問ありがとうございます!

①個人的な見解としては、IVES®︎のノーマルモードを併用するのであればESPURGEのみでも良いのではないかと思います。理由としましては、IVES®︎の場合パルス幅などの細かなパラメータの調整ができませんが、ESPURGEは細かな調整ができるからです。ただ、IVES ®︎のパワーアシストモードや外部アシストモードといったEMGを用いた電気刺激を行うのであれば併用は良いかと思います。その際には、ESPURGEの電気刺激を筋活動として検出していまう可能性がありますので、貼付位置には注意が必要になるかと思います。ただし、メーカーの方に確認したところ、併用はオススメできない(機器の特性上だけではない気もしますが、、、、)とのコメントもいただいているので、安全なのは同時には使用せずに目的に応じて使い分けるのが良いかと思います!

②手指屈筋群へ貼付する場合もあります!この場合、神経筋促通(CSTの興奮性を高める)というよりは、運動イメージをしやすくするといった行為主体感を促す目的の方が大きいかもしれません。まずは屈筋からの回復の方が期待できますので「自分の意思で動く」という感覚を掴んでいただくために使用します。その際、伸展方向はスパイダースプリントなどを併用して自然に伸展し、電気と運動指令で屈曲を促すイメージです!

電気刺激と課題動作の併用について、オン・オフ時間がそれぞれ3秒あると、ワイピングなどの動作がゆっくりになり、回数が減ってしまうのではと懸念しています。先生はどのように活用・工夫されていますか?

非常に良いご視点です。

実際、最近のメタアナリシスでも、電気刺激を併用した課題指向型練習が、上肢機能の改善に有効であると報告されています。そのため、積極的に併用していただくことを推奨します。オンオフ時間の設定については、「電気刺激を活用した質の高い動作練習」を目的とする場合、「運動回数(量)を担保するための自主練習」を目的とする場合で分けて考えるとよいかと思います。僕が実際に行うときも対象者へい「いまはスピードを意識しているから上手さよりも速さを意識してください」と説明をしてからスピードを意識した練習を行う(逆も然り)こともあります。

また、軽〜中等度の運動麻痺がある方の場合は、電流を“運動閾値”ではなく“感覚閾値”に設定し、長時間通電する方法もあります。

重要なのは、「電気刺激を用いて何を促したいのか?」という目的を明確にすることです。目的に応じて設定や使い方は大きく変わってきますので、もし具体的なゴールがありましたら、お気軽にご相談ください。

亜脱臼への対応

サギョウ先生

亜脱臼に関する質問です

亜脱臼に対して電気刺激療法を行っている時、末梢へのアプローチはどのようにされていますか?

手関節や手指に対しては、別の電気治療器でNMESやFESを行ったり、スプリントを併用した課題指向型練習を行うことが多いです。亜脱臼に対してIVESのパワーアシストモードの様な筋電図を用いた電気刺激を行っている場合には、スプリントの併用が良いかと思います。

亜脱臼に対して棘上筋に貼付する際の貼り方のポイントはありますか?

棘上筋は僧帽筋上部の深層にありますので、僧帽筋上部が最も薄く、肩峰と鎖骨の間にできる窪み(この窪みの下に棘上筋が走行しています)を目指して貼付することが多いです。また、電流を流した際に動作の確認も必要になります。

亜脱臼の症例に対してスリングの適応や外していく目安などを教えてください。

スリングに関しては意見が分かれるので、慎重に選ぶ必要があるかと思います。発症からの時期や痛み、アライメント、患者様のADLレベルなどによっても分かれるかと思います。個人的には、ADLが歩行ベースの場合や感覚障害などにより麻痺側上肢の管理が不十分な場合に使用することが多いです。外す目安としては、明確な基準が存在する訳ではありませんが、個人的には、疼痛がなく亜脱臼も1横指未満の場合には外すことが多いです。もちろん完全に外す前に、テストとしてリハビリ介入中に外した状態での肩関節の状態を評価する必要はあると思います。

亜脱臼の治療の際は、座位と仰臥位どちらで行ってますか?

基本的には棘上筋・三角筋後部に貼付し肩関節伸展運動を行うので座位で実施することが多いです。ただ、筋緊張の亢進が見られる方で、臥位の方が筋緊張が安定する場合には臥位(側臥位)で行うこともあります。

亜脱臼に対してTENSを使用している人を見かけます。亜脱臼に対してTENSを使用しても良いのでしょうか?

使用してはいけないと言う明確な理由はないかと思います。どちからと言うと、使用している目的が明確であることが大切かと思います。ただ、一般的なエビデンスからは、亜脱臼に対する治療はNMESが第一選択肢になることが多いです。

亜脱臼に対しては運動閾値で行うことがマストとなります。できるだけオンオフ時間は意識してパラメータ一設定は行いますが、課題指向型訓練に併用し亜脱臼を整複しながら手を使う時やPTの歩行訓練時に併用してもらう時には、上腕骨を下垂させたくないので、オンオフを設定せず持続的に運動閾値で棘上筋、三角筋後部に刺激を与えている場合があります。やはり運動単位回復のためには、抗重力位であってもオフ時間を設定するべきでしょうか。その他、併用する訓練や条件によっての臨床上のノウハウがあれば教えて頂きたいです。

おっしゃる通り、課題指向型練習と併用する際にはパワアシストモードにて設定することが多いです。もし、IVESが無い場合で、起立練習や歩行練習の際に上腕骨の下垂を防ぐ方法としましては、アームスリングを使用し、その中で運動閾値でのNMESを行います。そうすることによって、オフ時間を設定しても下垂を防ぎ、運動単位の回復を図ることができます。亜脱臼に対する併用練習としては、FEEを使用した促通反復療法を実施することもあります。

亜脱臼への電気刺激ですが、どのくらいの期間が必要なのでしょうか?また、弛緩性の麻痺に対してどこから当てるべきでしょうか

一般的な論文では6~8週間の研究期間が多いですので、そのくらいの期間はかかるかと思います。僕の経験でも1ヶ月前後では効果が出にくい印象があります。もちろん、運動麻痺の回復が見られればより回復が早くなる可能性は高いと思います。どこから当てても意味があるかとは思いますので、どんな合併症が出たら困るか?を考えるのが良いのかも知れません。そうなると亜脱臼予防は上位に入るかもしれません。

亜脱臼補正目的で電気刺激療法を行う際、どういう設定が良いか聞きたいです。(当院にあるのはESPURGEです)

亜脱臼の改善を目的には、NMESが一般的です。ESPURGEに関しては、具体的な方法をお伝えできませんが、おそらくEMSモードにて、30〜50Hz、最大許容刺激量、オン5秒:オフ5〜10秒、1日30分前後(他の練習と併用しても可)実施すると一般的な報告と同様の設定ができるかと思います。また、疼痛が強い場合には、ランプアップ・ランプダウン時間を設定することで痛みを抑えながら実施可能かと思います。

亜脱臼に対する電気刺激について。FEE(IVES®︎)を使用して川平法のように利用する場合があります。また、立位練習と併用して行うこともあります。これら以外にオススメの方法はあります?

個人的に特に急性期の方におすすめしたいのがCCFES(対側支配性機能的電気刺激)です。これはIVES®︎の外部アシストモードを利用して、非麻痺側と麻痺側運動を対側性に行います。貼付位置は棘上筋・三角筋後部です。明確な回数などは先行研究が見つかりませんでしたので、同様(手関節の背屈)の論文を参考にしていますが、20回を1セットとして、5セットほど実施しています。患者様の疲労などに合わせて実施していただければと思います!

亜脱臼に対する電気刺激療法の実施時間を知りたいです。自分で調べた論文では1時間と書いてあり、とても臨床では足りなそうです。

一般的な亜脱臼に対するアプローチ時間としては、30分以上という報告が多いです。しかし、皮質脊髄路の興奮性に関する報告では、20〜40分間の運動閾値での電気刺激療法が皮質脊髄路の興奮性を高めたと言われています。さらに、60分の刺激はむしろホメオスタシス可塑性というメカニズムによって皮質脊髄路の興奮性を抑制したとも言われています。これらのことから最低20分程度の促通がおすすめです。

片麻痺による脱臼に対し理学療法時間でも電気刺激を行うことがありますが、通電時間に悩むことがあります。個人的には筋疲労や本人の疲労具合、電気による整復が出来ているかを目安にはしています。本人の疲労がない場合は電気刺激を継続していいという考え方でよろしいでしょうか。また、本人の疲労がなく、最初の設定(脱臼が整復できる程度の電気刺激)では整復が十分ではない場合は強度を増やしていいものかをサギョウ先生のお考えを教えていただきたいです。

とても臨床的で貴重なご質問ありがとうございます。まず、通電時間に関してですが、システマティックレビューなどを参考にすると30〜40分の通電が一般的です。少し古い論文にはなりますが、Andrewsら(2013)の報告では、運動閾値での電気刺激(motorES)を20分、40分、60分実施し、それぞれを比較した結果、60分実施した場合にはむしろ皮質脊髄路の興奮性が抑制されたとのことです。この報告やその他の論文を参考にすると、本人の疲労を考慮しつつ、20〜40分程度の時間に設定することが理想的だと推測できますね!次に、設定に関してですが、まず変更すべき刺激強度(mA)になるかと思います。理由としては、周波数やパルス幅は論文でも固定されていることが多く、刺激強度に関しては「運動閾値程度」や「耐えられる最大強度」のようにすこし遊びがあるような表記が多いからです。つまり、刺激強度は明確な出力が決まっていない可能性が高いので、1番初めには変更するのは刺激強度が良いかと思います。その他、刺激強度を高めてことで疼痛が出現するなどの場合には周波数やパルス幅を変更し、本人に最適な設定を見つけていく必要があるかと思います!

痙縮への対応

サギョウ先生

痙縮に関する質問です

麻痺側に対して痙縮の予防として使用する際、非麻痺側では筋収縮の得られる出力で刺激を行っても麻痺側では筋収縮が得られない場合の原因や対処法について教えていただきたいです。

発症からの期間や症状の程度にもよるとは思いますが、いくつの原因が考えられます。

まず1つ目は、筋線維自体の変化(線維化など)。
2つ目は、神経筋接合部の機能低下。
3つ目は、拮抗筋との協調の乱れ。その他にも、運動単位の減少や皮下組織の状態変化、アライメントの変化などが考えられます。

それぞれの対処に関しては、状態によって変わってきますので、まずは何が原因かを評価するのが良いかと思います。1つすぐにできる対処法を述べるとすれば、疼痛がない範囲でパルス幅(調整できない治療器の場合には電流強度)を調整するのが良いかと思います。その他のパラメータの調整も必要にはなりますが、まずはどこかのパラメータを変化させて、その際の筋収縮の程度等を確認するのが良いかと思います。

手指の屈曲拘縮軽減として、拮抗筋にアプローチする場合どこにモーターポイントを貼ると効果的でしょうか?

関節拘縮に対しての効果に関しましてはなんとも言い難いですが、関節可動域制限に対する効果は報告されています。手指の屈曲に対しては、総指伸筋のモーターポイントに貼付する報告が多いです。手関節でしたら、尺側または橈側手根屈筋がメジャーかと思います。個人的にもこの3つの筋肉に対しての貼付は頻度が多いです。

中等度~重度の運動麻痺がある場合、痙縮の抑制を目的に電気刺激療法を用いた場合に、効果が出るまでにどのくらい期間がかかるのか教えていただきたいです。

症例研究やシステマティックレビューからすると、4週〜7週間介入して得られる介入効果として報告されることが多いです。

感覚障害への対応

サギョウ先生

感覚障害に関する質問(しびれ・痛み・鈍麻)です

しびれ同調TENSはIVESやポスティムなどでも実施可能でしょうか?やはり伊藤超短波のESPURGEが必要なのでしょうか?しびれ同調TENSのメカニズムについても知りたいです。

IVES®︎やポスティムなど、パラメーターが調整可能であり、しびれに同調させることができる機器であれば、ESPURGE以外の機器であっても実施可能です。何をもって「しびれが同調した」という認識をするかを理解しておくことが重要なポイントだと思います。先行研究では「しびれ感と電気刺激の感覚が打ち消しあうように減弱する現象」が最も同調した状態と定義しています。同調した時の感覚は個人差がある為、対象者の内省にしたがって、最も同調したといえる状態に近づけることができるようにパラメーターを調整することが重要です。

メカニズムとしては、まだ仮説ではありますがしびれ感固有の感覚神経を選択的に遮断している(busy line effect)という機序が関与しているといわれています。一般的なTENS(特によく実施される高周波TENS)では、刺激を行うとゲートコントロール理論や下降性疼痛抑制系などが作用し鎮痛が可能となりますが、複数の感覚神経を同時に刺激します。そのため、副作用として知覚障害や機械的感覚低下の誘発が起こりうるといわれています。しびれ同調TENSではbusy line effectにより、しびれ感のみを減弱することが可能となります。

TENSでの除痛の効果判定や、持ち越し効果(ゲートコントロールや内因性オピオイドなどの効果の違い)について、実際の治療成功例があれば教えてください?

鎮痛の効果判定などには一般的なNRSやVAS、ROMなどを用いることが多いです。本来はfMRIやEEGを用いるべきかとは思いますが、セラピストができる範囲となるとなかなかここまでの評価はできておりません。。。効果に関しては、電気刺激に対して過敏な患者様(NMESを行うと筋収縮前に疼痛が聞かれる)に低周波高強度TENSを用いて下行性疼痛抑制経路の活性化を促したところ、その後に同設定のNMESを行っても疼痛が聞かれることはありませんでした。

痺れに一番効く電気治療についてお聞きしたいです。

「しびれ感と電気刺激の感覚が打ち消しあうように減弱する現象」が最も同調した状態と定義しています。同調した時の感覚は個人差がある為、対象者の内省にしたがって、最も同調したといえる状態に近づけることができるようにパラメーターを調整することが重要です。 しびれ同調TENSではbusy line effectにより、しびれ感のみを減弱することが可能となります 。

同調TENSは痺れ全般に効果があるのでしょうか。それとも何由来の痺れかにもよるのでしょうか?

論文では脳卒中・脊髄疾患・末梢性疾患すべてにおいて報告があります。しかし、しびれ感といっても「ビリビリ」「チクチク」「膜が張った感じ」「凍てつく感じ」など様々な症状があります。すべての報告において、電気刺激と似たような感覚のしびれ(例の場合「ビリビリ」が近い)においてのみ同調が可能であり介入効果が認められたと報告されています。その為、介入の際にはまずは症状の把握に観察者バイアスが関与していないかを注意し、内省を細かく聴取することで適応となるのかどうかを判断することが重要になります。

当院ではIVESを使用していますが表在、深部ともに感覚障害がある方に対して使用する上で、注意すべきところを詳しく教えていただけると嬉しいです!

パラメータの注意点としては、感覚障害がある患者様の場合には、非麻痺側での感覚閾値から運動閾値までの刺激強度を参考に、麻痺側でも同様に設定するのが良いかと思います。また、運動閾値以下で収まるように、筋収縮が起きているかどうかを触診しながら確認しています。IVESではパルス幅の設定ができませんので、Aβ線維を選択的に刺激することは他の治療器よりもやや難しいかも知れません。

感覚障害の方へ貼付するには、どこに貼付するのがいいでしょうか?

考えたい3つのポイントです。①神経の直上に貼付する、②デルマトーム上に貼付する、③異常感覚がある部位に直接貼付する。個人的には感覚障害に対してはTENSを使用することが多いのですが、高頻度TENSの場合には③に貼付するのがおすすめです。低頻度TENSに関しては、①または②が効果的な印象です。患者さんの反応によって変わりますが、いずれかを試してみるのが良いかと思います。

TENSの鎮痛メカニズムを教えてください

TENSは周波数によって鎮痛効果のメカニズムが変化するため、使用目的に応じて使い分けることを推奨します。 ・低頻度TENS:2〜10Hz前後→内因性オピオイド系や皮質レベルでの鎮痛メカニズムが報告されており、疼痛部位以外の貼付であっても効果ができる。 ・高頻度TENS:50〜100Hz→ゲートコントロール理論や局所性ブロックを中心とした鎮痛メカニズムであり、対象部位への貼付において高い鎮痛効果が得られる。 TENSにおいては変調効果を持たせることで「順応」を予防することができます。変調には刺激強度・周波数・パルス幅を変化させる3つの方法があります。お持ちの治療機器で変調できる箇所を設定するのが良いかと思います。また、2チャンネルある場合には、低頻度TENSと高頻度TENSを同デルマトーム上の貼付するのが良いかと思います。

しびれ同調 TENSを実施したのですが、表在感覚障害を呈した方でmAがかなり高くなってしまい同調ができなかったのですが、感覚障害を呈した患者さんには同調TENSは難しいですか?

ご質問ありがとうございます!

結論からお伝えすると、重度の感覚障害を呈している場合は、しびれ同調TENS(DM-TENS)の適応とならない可能性があると文献でも示されています。

DM-TENSでは、電気刺激が知覚レベルに達し、患者さん自身のしびれ感と主観的にマッチングすることが重要です。しかし、表在感覚が低下していると電気刺激の知覚閾値が上昇し、しびれと一致する感覚を誘発するには高いmAが必要になることがあります。

このとき、強度が高すぎると筋収縮や不快感を伴うことがあり、感覚とのマッチング前に中止を余儀なくされることもあります。

実際に、しびれ同調TENSを開発された西先生の2022年の論文でも、SSEPでN20が消失していたような重度の感覚障害を有する症例では適応できなかったと報告されています。

ただし、西先生ご本人の勉強会では、筋収縮が起きる程度まで刺激強度を上げたことで、しびれ感が軽減された症例もあったと紹介されていました。ただしそのような場合には、 ・筋疲労などのネガティブな影響が出る可能性 ・運動閾値を超えるとTENSではなくNMES等の扱いになる といった注意点があり、標準的な適応とは言えないため推奨はされていません。

したがって、どうしてもしびれを軽減したい強いニーズがある場合に限って、適切な注意を払いながら強度を調整して試みるという判断もありますが、その際は治療目的や期待できる効果を慎重に整理し、必要に応じて別のアプローチとの併用も検討するとよいかと思います。

急性期での使用

サギョウ先生

急性期での電気刺激の使用に関する質問です

急性期で中等度〜重症例の対象者に対しては電気刺激を併用してでも高負荷のトレーニングがいいか?それとも正しい運動のイメージを促すのが優先なのか?

対象者の発症からの時期や病態、学習段階などにより大きくことなりますが、急性期ということを考慮すると、個人的にはミラーセラピー・BCIなどの運動イメージを促進する介入はおすすめしたいです。ただ、急性期の大切な役割の一つに廃用予防がありますので、運動閾値にて筋萎縮を予防するNMESなども併用することが望ましいかと思います。それぞれの時間が取りにくいという場合にはIVESのパワーアシストモードでEMGランプを見ながら(バイオフィードバックのように)随意運動を行っていく方法もおすすめです。

急性期の患者様では、半球間抑制を考慮して麻痺側に対する電気刺激を行った方が良いのでしょうか?

CI療法やガイドラインなどの視点からすると麻痺側を中心に介入を行った方がいいかもしれまん。

ただ、近年は脳可塑性のメカニズム(基礎編資料:その他の基礎知識→脳卒中後の脳活動再編成過程、神経可塑性のメカニズム)から両側への電気刺激(TENSやCCFES)などが用いられて良好な結果が出ていると報告されています(実践編資料:3.皮質脊髄路を興奮させる→重症例CCFESの一例、中等度 TENSの一例)。

これらのことから、両側からの介入もあり!と考えています。明確なラインではありませんが、個人的な印象としては、BRS:IV~Ⅴ以上の場合には麻痺手メイン、BRS:Ⅲ~IV以下の場合には両側も検討、この辺りが安牌かなと考えています!

急性期で筋萎縮予防を図りたい際に、対象者の栄養状態によって、設定頻度や強度、使用頻度や時間など使用方法は変化するのでしょうか?

NMESなどの筋力強化を図る目的で電気刺激療法を使用する際には、筋力強化練習などと同様になるかと思います。一般的には高強度負荷が効果的とされますが、低栄養(タンパク質など)の場合には、筋力増強効果が得られにくいため、強度や頻度は下げることが多いです。単収縮を誘発する低周波刺激でも廃用性筋萎縮を予防するとの報告もありますでの、栄養状態によっては低負荷刺激を選択するのも良いかと思います。また、最近の研究では、栄養療法との併用により筋萎縮予防が可能となったとの報告もありますので、栄養面の把握は重要になるかと思います。

IVES®︎関連

サギョウ先生

IVES®︎の使用に関する質問です

急性期からIVESは使用しても良いのでしょうか?

急性期〜慢性期までを対象にした報告が多数ありますので、使用しても良いかと思います。個人的には、重症度にもよりますが、IVESは本人の運動意図を実現し運動主体感を伴いやすい治療法だと思っていますので、むしろ急性期でも使用するべきかと思います。

IVESのパワーアシストモードを使用する時に感度と刺激強度のどちらを先に調整するのがいいでしょうか?

感度の調整を先に行うことが多いです。スムーズな動きが再現できる範囲で徐々に感度を下げていき、筋出力の向上にあわせて刺激強度を調整していきます。動作を観察しつつ調整を行うことが重要です。

運動制御が苦手な場合のIVESの使用例ですが、下肢でも実施することは可能ですか?【実践編動画:症例ごとの実施例〜感覚を促通したい〜より】

可能です。下腿三頭筋や大腿四頭筋の筋収縮のコントロールを学習する目的で使用することが多くあります。

IVESを使用しています。随意収縮があるにも関わらず、標的筋に電気が流れずアシストできていないことがあります。これはパルス幅の設定?脱神経筋?電気抵抗?電気がうまく流れていない原因は何があげられますか?

使用しているモードによっても原因が変わると思いますので、ご期待に沿った回答ができない可能性がありますので、あらかじめご了承ください。IVESに関しましては、パルス幅の設定はできません。また、脱神経筋の場合には一般的に随意収縮は起きないかと思います。電気抵抗が強い場合などには痛みなどを伴うことが多くありますので、痛みの確認をするのが良いかと思います。その他に電気刺激がうまく行えていない原因として考えられるのは、パラメータ(刺激強度・周波数)の調整が不十分であることや、電極パッドの摩耗、貼付位置がモーターポイントおよび神経からズレているなどが考えられるかと思います。

感覚障害がある方にIVESを使用する場合、電気の刺激強度の設定で注意している点が知りたいです。

障害側の設定前に、同設定の電流を非損傷側へ流すようにしています。また、ターゲットの筋の触診を行いながら電流を流して過剰な刺激をしないようにすることもあります。

IVESの中でもモードによっていまいち使い分けが分かっていません。どのモードがどういった対象であったり、何を目的にした時に使うのか?

個人的にどの様な目的でIVESのモードを使い分けるかを共有させていただきます。ノーマルモードに関しては、最も自由度が高く、使用頻度が多いモードです。使用例としては、重度運動麻痺の亜脱臼に対するNMESや手関節背屈などの機能代行を目的としたFESとして使用することがあります。軽度運動麻痺や感覚障害、疼痛に対してはTENSやPNSとして使用することが多いです。次に使用頻度が多いのはパワーアシストモードです。いわゆるIVESを中等度〜軽度運動麻痺に対して使用します。その他、EMGランプをバイオフィードバックとして使用することもあります。外部アシストモードに関しては、重度運動麻痺に対して、ミラーセラピーなどと併用して実施することが多いです。また、左右半球間のバランス調整を促す目的で使用することもあります。その他のモードに関してはあまり使用頻度が多くありません。ここで記載した内容は僕の個人的な経験ですので、参考程度にしてください。

当院ではIVESを使用していますが表在、深部ともに感覚障害がある方に対して使用する上で、注意すべきところを詳しく教えていただけると嬉しいです!

パラメータの注意点としては、感覚障害がある患者様の場合には、非麻痺側での感覚閾値から運動閾値までの刺激強度を参考に、麻痺側でも同様に設定するのが良いかと思います。また、運動閾値以下で収まるように、筋収縮が起きているかどうかを触診しながら確認しています。IVESではパルス幅の設定ができませんので、Aβ線維を選択的に刺激することは他の治療器よりもやや難しいかも知れません。

強さ-時間曲線では運動神経へのアプローチの際は、300usecが効果的だと思います。しかし、旧式のIVESだとパワーアシストでも 50usec程度だと表記がありました。そうなると DRIVEのManualモードでの運動アシストの方が運動神経にアプローチできつつ運動神経の促通にもつながるのではと考えました。使い分けに悩んでいるので教えていただけると助かります。

IVESのパルス幅についてですが、対称性二相性パルスの50μs×3連となっていますので、300μsと同様(厳密には同じではありませんが)のパルス幅となっています。このことから、運動神経に対するアプローチも可能となっています。

IVESを使用していますが、パワーアシストモードでの練習の際うまく収縮が持続せず途切れ途切れになってしまいます。その場合何が考えられますでしょうか?

パワーアシストモードは患者様本人の筋活動を補助するように通電します。そのため、本人の筋活動が持続できない場合、電気刺激も安定しないため、途切れ途切れの筋収縮となってしまうことがあります。特に、筋出力を要する課題では、健常者でも随意的収縮は力の変動が大きくなるとされているので、IVESも合わせて変動した電気刺激を入力している可能性があります。また、IVESは50μs×3連の対称性二双性パルスのため、300μsと類似したパルス幅ではありますが、わずかに休息が入っています。その休息の際に電気が途切れ、断続的な筋収縮が見られることもあります。

IVESについて質問です。総指伸筋など比較的拮抗筋と近い場所で使用すると屈曲した際も刺激を拾ってしまうことがあります、どうすれば良いのでしょうか?また、うまく筋活動が拾えない時はどうしていますか?

パワーアシストモードを使用されているかと思いますので、拮抗筋の筋収縮により目的としていない運動が顕著に出現する際は、ノーマルモードで目的筋へ電気刺激を行うのが良いかと思います。筋活動が拾えない場合には貼付位置を変更することが多いです。筋腱移行部や隣接した筋と重なっている場所などでは筋活動をうまく拾うことができない場合もありますので、それらを避けて貼付するのが良いかと思います。また、電極パッドの汚れや感度設定なども確認するのも大切です。

拾った筋電図をアシストするということは、ロボットスーツHALLと似ていると言うことでしょうか?

おっしゃる通りです。HALLの場合は外骨格ロボットがアシストしますが、IVESに場合は電気刺激がアシストしてくれます。ただ、HALLの方が筋電図の検出感度は高いので、対象となる方は多いとおもいます。

IVESは重症例には使えないとあったが、重症の運動機能障害に使うにはどれがいいのか教えて下さい。

電気刺激療法としてのIVES(パワーアシストモード)は筋電図が検出できない場合は適応外となりますが、治療機器としてのIVES®︎はノーマルモードや外部アシストモードなどがありますので、重症例の場合にはそれらのモードを使用するのが良いかと思います。

IVES使用時、パワーアシストモードにて総指伸筋に装着し、よくペグなどを使用した課題指向型練習などを実施しています。しかし、うまく電気が流れない患者様が見受けられます。電気量や感度も変更していますがなぜでしょうか?

様々な要因があるかと思いますが、一つ挙げられるのは、手指の巧緻動作では顕著な筋活動を必要としないため、IVES®︎が検出できる筋活動が起きていない可能性があります。巧緻動作などの場合には、運動麻痺の程度にもよりますが、ノーマルモードにて感覚閾値の電気刺激を行うのもオススメです。

IVESを麻痺・感覚機能共に重度の方に使用する場合の設定方法を教えていただきたいです。 以前使用した際は、筋収縮が入る手前の所で設定していました。その時は先輩に教えてもらったものをそのまま使うという状況だったので、知識がないまま使用してしまっていました。目的によっても変わるかもしれませんが、サギョウ先生が使用する際の目安などを教えていただけると幸いです。

急性期などで、まずは麻痺側の筋萎縮予防したい場合にはNMESまたはFESにて筋力増強トレーニングを実施するともいます。ただ、筋力トレーニングも長時間は行えませんので、その後、TENSやPNSにて皮質内で起きているバランスの不均衡(過剰な半球間抑制や皮質内抑制など)の是正を促すかと思います。また、IVES®︎がある場合には、CCFES(外部アシストモード)や、EMG-FES(パワーアシストモード)とミラーセラピーを併用し、皮質の可塑性を促す介入をするかと思います。

IVESのモードについて質問なのですが、トリガーモードと外部トリガーモードの使うタイミングが分かりません。使うとしたらどのような意図で使うものと考えますか?

ノーマルモードやパワーアシストモードと比較するとあまり使用頻度は多くありませんが、使用する場合には、運動学習を目的に使用しています。例えば、促したい出力に設定し、電気が流れるまで患者様に筋収縮を促すことで、視覚的にも感覚的にも運動を理解しやすくなります。また、パワーアシストモードでは筋活動が拾えない患者様にはパワーアシストモードへ移行するまで使用したりします。

IVESを最近購入したのですが、重度の運動麻痺(亜脱臼あり)の方にはどういった使用方法が良いのか教えてほしいです。

亜脱臼の改善を目的には、3つのモードを使用することが多いです。一つ目はノーマルアシストモードにてNMESやFESの様に使用します。設定はシンプルで30〜50Hz、最大許容刺激量、オン5秒:オフ5〜10秒、1日30分前後(他の練習と併用しても可)実施していきます。二つ目はパワーアシストモードです。筋電図が拾えるレベルでないと使用はできませんが、筋電図ランプをみながら練習を行うことで、バイオフィードバックを用いた練習が可能です。三つ目は外部アシストモードです。非麻痺側へ電気刺激を行うことで、特に重度運動麻痺の患者様や急性期患者様では両皮質間の結合性を増加し、皮質の可塑性を促す可能性があります。

IVESでの質問です。パルス幅、300μsに設定したい場合、通電時間の調整をどのようにしたら300μsになるのかがわからなくて困っています。

IVESのパルス幅は固定されていますので変更することはできません。IVESのパルス幅は対称性二相性パルスの50μs×3連となっていますので、300μsと同様(厳密には同じではありませんが)のパルス幅となっています。

亜脱臼に対する電気刺激について。FEE(IVES®︎)を使用して川平法のように利用する場合があります。また、立位練習と併用して行うこともあります。これら以外にオススメの方法はあります?

個人的に特に急性期の方におすすめしたいのがCCFES(対側支配性機能的電気刺激)です。これはIVES®︎の外部アシストモードを利用して、非麻痺側と麻痺側運動を対側性に行います。貼付位置は棘上筋・三角筋後部です。明確な回数などは先行研究が見つかりませんでしたので、同様(手関節の背屈)の論文を参考にしていますが、20回を1セットとして、5セットほど実施しています。患者様の疲労などに合わせて実施していただければと思います!

IVES®︎のmAの調整は、回して調整すると思うのですが、どの位置でどのくらいのmAが流れているなどがわからないです…

正確な位置としましては詳細な記載がありません。ですので、正直に言うと、“分からない”が正解だと思います!

IVESの最大出力電流は35mA(rms値・実効値)で、これは500Ωの負荷がかかっている時に出せる最大の電流です(説明書にもそう書いてあります)。

この“35mA rms”っていうのは、最大電圧がかかっている状態で、標準的な条件下での時間平均的な電流量という意味です。つまり、いつもピッタリ35mA出てるわけじゃなくて、皮膚や組織の抵抗(個人差あり)によって電流は変動するってことです。

IVESは基本的に電圧駆動型の治療器なので、出力つまみを回すことで電圧を調整して、結果的に流れる電流を変えている仕組みです。ただし、最大でも35mAを超えないように安全設計されています。

つまり、つまみをどのくらい回したら何mAか、というのは明確に分からないし、目安の数値表示もされていません。

実際にどれくらいの電流が流れているかは、「筋肉の反応(=SD曲線を参考に)」を見ながら予測するしかないというのが現実的なところです!

アイビスを使用している時なのですが、中枢性も末梢性でも運動麻痺のある筋肉にノーマルモードで電気を流しても、 収縮が入らない方を何名も経験しました。 その場合は、筋肉の廃用予防にもならないと考えています。 うまく筋肉を収縮してもらえるようなコツや工夫などがあればご教授頂きたいです。

ご質問ありがとうございます。脱神経筋に対する電気刺激は非常に難しく、通常の低周波や短いパルス幅では筋収縮を得ることが困難です。方法としてはないわけではありませんが、パルス幅を10~100msと長く設定する特殊な機器が必要でして、こうした機器は日本では保険適用外であることが多く、導入は容易ではありません。

ただ、収縮が得られないからといって何もできないわけではありません。他動運動や筋への軽い叩打、触圧刺激を行うことで、筋萎縮や関節拘縮を予防することができます。また、体性感覚入力を維持することで中枢神経系への刺激となり、運動イメージやミラー療法と組み合わせることで脳の運動マッピングを保つことができます。

脱神経筋へのアプローチでは「動かす」ことよりも「守る」「つなぐ」ことが重要です。再神経支配の可能性を信じて、廃用を防ぎながら神経-筋の再統合を支援していくことが大切です。

IVES Cureでも小さい画面でEMGが見れますが、IVES Cureと比較したProならではのメリットは?また、EMGはどのように臨床活用しますか?

まず初めに、僕の認識が正しければIVES Cureは筋活動を検出する機能はついていないかと思います(公式HPはこちら)。。。ですので、IVES Cureと比較したIVES Proのメリットとしては、パワーアシストモードやEMGモードなどの筋活動を検出できるところかと思います!業者さんに確認したところ、IVES Cureでもパワーアシストモードはできるようですので、違いとしては、EMGモードやNMESモードでのランダムパルス(周波数の変調)の設定できるかどうか、購入時に付属するアクセサリーの違いだそうです!(誤りがありましたので訂正致します!大変申し訳ありませんでした!)

EMGの臨床活用としては、バイオフィードバックとして運動学習や運動制御を促す際に使用しています。具体的には、運動麻痺の方に対して、出力しようとしている運動イメージと実際の出力(フィードバック)が一致しているかを視覚的に認識しながら介入しています。また、感覚障害などで力をうまく抜けない方に対して、少しづつ筋活動を抑制する際にEMGを提示しながら反復練習をしています。

IVESproに関して、mAが上がらないのはどのような事が考えられますか?また同機でFEEを使用されたことがあれば、具体的な方法を教えて頂きたいです。

ご質問ありがとうございます!

mAに関しましては、考えられる要因が多く、明確な回答ができません。もしよろしければ具体的な状況などを教えて頂けますと幸いです。

FEEに関しましては、正直あまり使用せずにデモ期間を終えてしまいました。。。ただ、IVES Plusの時よりもFEEの種類が多く、慣れたら使いやすい印象です。特にFFEだけで陰極と陽極の電流を流せるパッドは手内在筋にも使いやすいと思います!

アイビスの治療について質問です。設定に通電制御ccとcvがありますが、設定の選択の仕方と効果など、分かることを教えてほしいです。

IVES®︎(CCとCVを変更できるのでProからCureかと思いますのでこれに対して回答します)の通電制御については、CC は電流を一定に保つ方式、CV は電圧を一定に保つ方式です。

CC は毎回安定した刺激量を得やすく、筋収縮をしっかり出したいトレーニングや随意運動のアシストに向いています。つまり、一般的なNMESやTENS、FESに適しています。ただしパッドが浮いたり接触が悪くなると、設定した電流を流そうとして電圧が上昇し、局所的な電流密度が高くなり痛みや火傷のリスクが上がる点には注意が必要です。
一方で CV は電圧を固定するため、パッドの接触面積が変化した場合には流れる電流が自然に増減します。つまり動かしながら行うFFEなどの練習(実際IVES Pro/CureはFFEはCVで固定されていますど)や、パッドがズレやすい部位では安全性が高くなります。皮膚抵抗が上がれば電流が減る方向に働くため、急な痛みにつながりにくい反面、接触面積が狭くなると刺激が弱くなって思ったような筋収縮が得られないこともあります。
まとめると、安定した収縮を出してトレーニングしたい場合や随意運動をしっかり補助したい場合は CC、安全性を優先したい場面や動きの中でパッドの状態が変化しやすい場面では CV を選ぶとよい、というイメージで大きく間違いありません。

補足として、より論文を意識して最適な電気を流していきたい(研究や症例発表なども含む)場合はCCを、リスクを考慮してより安全に電気を流したい場合はCVに設定するのも良いかと思います!

ESPURGE関連

サギョウ先生

当院に導入または個人的に購入できたらより充実した内容をお届けします!

亜脱臼補正目的で電気刺激療法を行う際、どういう設定が良いか聞きたいです。(当院にあるのはESPURGEです)

亜脱臼の改善を目的には、NMESが一般的です。エスパージに関しては、具体的な方法をお伝えできませんが、おそらくEMSモードにて、30〜50Hz、最大許容刺激量、オン5秒:オフ5〜10秒、1日30分前後(他の練習と併用しても可)実施すると一般的な報告と同様の設定ができるかと思います。また、疼痛が強い場合には、ランプアップ・ランプダウン時間を設定することで痛みを抑えながら実施可能かと思います。

TENSの活用の仕方がいまいち自信がありません。ESPURGEで、痙縮筋、疼痛部位に貼付することはありますが、随意性向上を目的に貼付することはありますか?

TENSの効果として、半球間抑制の是正や皮質内抑制の是正などが挙げられています。また、感覚運動皮質の活動性が向上し運動機能が書いぜんする可能性(運動感覚興奮連関)が示唆されています。これらの報告は、TENSのみを実施するというよりは、課題指向型練習と併用して実施することでより効果的とされています。

治療場面での質問です。使用しているESPURGEになるのですが、出力を上げていくと目的の閾値に達する前にエラーになり止まってしまう経験をたまにします。非麻痺側ではエラーにならなかったり、皮膚抵抗や電極、機器自体の問題ではない場合何が考えられ、どうすれば改善されると考えますか?

勤務地にESPURGEが無く使用の経験が浅いため具体的な方法には説明が足りないかもしれませんがご了承ください。おそらく何らかの原因で正常な電流が流れておらず、出力エラーになっている可能性が考えられます。抵抗の話にはなってしまいますが、麻痺側は非麻痺側と比較して浮腫や脂肪組織によりインピーダンスが高くなっていることが多くあります。パラメータの調整で対応する場合は、周波数を高くすることでインピーダンスを低くすることが可能となる為、Hzの調整で刺激が可能となるか試してみると良いと思います。

電気刺激との併用

サギョウ先生

電気刺激療法と他療法の併用などに関する質問です

電気刺激療法の後に課題指向型をするのか、ながらがいいのか迷う時があります。ながらだと母指の伸展など出にくい場面があるので、後にしたりします。

論文では、電気刺激を前に実施するパターンや後に実施するパターン、併用して行うパターンなど様々です!全て良好な効果の報告があるので、対象者や目的に応じて使い分けるのが良いかと思います。個人的には、同じ神経支配領域に感覚閾値で刺激し、機能代行はスプリントで行うことがあります。

リハビリの中で電気療法のみの時間というのはなかなか設けられないと思っております。どのようにリハビリの時間に組み込むか、併用するならどのようなエクササイズが良いかなどあれば教えていただきたいです。

個人的には、症状の程度にもよりますが、電気刺激療法と課題指向型練習を併用することが多いです。また、亜脱臼予防のNMESとは起立練習などを併用することもあります。その他、重症例ではミラーセラピーやVMIと併用することもあります。

脳卒中以外

サギョウ先生

脳卒中以外を対象とした電気刺激療法に関する質問です

ギランバレー症候群で肩関節亜脱臼をしている症例を多く担当します。ギランバレーの方への使用はどのように実施していますか?

大変申し訳ありませんが、経験が未熟なためギランバレー症候群の患者様を対応したことがありません。こちらのご質問に対して教科書上の知識をお伝えするのも失礼かと思いますので、回答を控えさせていただきます。もし、今後対応する際にはお答えできればと思います。

脱神経筋を収縮させることは困難ですか?

結論から申し上げると、一般的な電気治療器では難しいと思います。S-D曲線から考えるとパルス幅が10ms(10,000μs)が必要になります。一般的に病院で導入されていることが多い電気治療器でここまでパルス幅を調整できるものは少ないかと思います(例:IVES 300μs相当)。また、調整ができた場合でもC線維を刺激する可能性も高いので疼痛に注意が必要です。さらに、パルス幅が増大すると皮膚抵抗が増大しやすく、直流に近くなるので熱傷やアレルギー反応が生じやすくなると報告されています。エビデンスも少なく、一般的には適応にならないと言われる場合があります。

ギランバレーなど末梢障害などの方にも使用したりしますか?

経験が浅くギランバレーの症例を対応したことがございません。その他の末梢神経障害としまして、頚椎症(神経根症)の患者様には使用することがあります。一般的にも、近年は末梢神経症状(感覚障害含む)に対する電気刺激療法の報告も増えているかと思います。

認知症が強い方も多く、課題理解やフィードバックが難しいかなと感じました。

認知機能の程度によって、電気刺激に対して強い抵抗感や拒否反応をしめされる方も多く担当したことがあります。課題理解に関しては、まずは電気刺激そのものに対して良好な印象を持たせることで上手くいくこともあります。疼痛が起きないようにHzを極力低くした介入や刺激強度が感覚レベルでのみ刺激すること、対象者が「気持ちいい」と感じる可能な範囲でのパラメーターから実施していき、徐々に調整していくことを意識するようにしています。

末梢神経障害の方に対しての電気刺激の強度について

基本的には中枢神経系と同様の設定になるかと思います。しかし、脱神経筋に対しては高パルス幅が必要になるかと思います。

訪問リハで小児を診ている子ですが分娩麻痺で左麻痺が出てしまってるのですが、電気刺激療法はどのように使っていけばいいか知りたいです。

経験が浅く小児の分娩麻痺の症例を担当したことがなく、申し訳ありませんが、具体的なお話はできかねます。可能性としては、腕神経叢の損傷による末梢神経麻痺と考えるのであれば、一般的な電気刺激と同様のパラメータでも良いのかも知れません。しかし、小児を対象とした報告はかなり少ないですので、現場に立っていない僕からできるアドバイスがありません。大変申し訳ありません。。。

肩の腱板断裂にて筋移行術を施行した方が、筋収縮を得づらいため、電気刺激療法を実施しています。その際に電気の強度や運動の回数等負荷量の設定に悩んでいます。何か指針はありますでしょうか?

大変申し訳ありませんが、整形外科的な症例に対する電気刺激療法を行なったことがありませんので、具体的なお話ができません。純粋な筋への負荷としては、最大随意筋力(MVC)の70%以上の高強度トレーニングが筋力増強には効果的と言われおり、高刺激・高頻度の電気刺激が有効とされています。具体的なパラメータとしては、下肢の報告にはなりますが、最大許容運動レベル、50Hz、オン2秒:オフ4秒、100回とされています。脳卒中後の亜脱臼に関しては、250〜300μs、35〜50Hz、オン2.5秒:オフ2.5〜5.0秒、運動閾値(最大許容運動レベル)とされています。疾患が違いますがよろしかったら参考にしてください。

分娩麻痺の場合でも、電気刺激療法で回復は見込めるのでしょうか。また、おすすめの機器があれば教えて欲しいです。分娩麻痺で小児の子なんですが、手指伸展が見られないのですが、この場合はIVESよりもFESを使った方がいいのでしょうか?

報告数が少ないので参考程度ですが、2021年のレビュー論文によると電気刺激の有効性は示されているようです。主な効果としては、筋機能回復、筋萎縮予防、神経組織の再生促進、関節可動域、疼痛緩和などが挙げられています。しかし、具体的なパラメータの記載はありませんでした。。。手指伸展に関しては、随意性が多少あり、運動するイメージを促通する目的がメインであればIVESも良いかと思います。随意性が乏しく、筋肥大や筋萎縮予防を目的とするのであればFESが良いかと思います。

頸髄損傷患者を担当することになりました。L1以降の完全麻痺に対して、下肢への電気刺激療法の活用方法(IVES、エスパージ)を教えて頂きたいです。

大変申し訳ありませんが、脊髄損傷症例に対する電気刺激療法を行なったことがありませんので、具体的なお話ができません。また、下肢に対するご質問もお答えできかねますので、一般的な内容のみの回答となりますのでご理解ください。先行研究では、NMESやNMESと運動療法(促通反復療法など)を併用した報告があります。その際によく用いらている電気パラメータの設定に関しては脳卒中などと同様の一般的な設定のことが多いです。

その他

サギョウ先生

どのカテゴリーにも当てはまらない質問です

市販されている安価の電気治療器でおすすめはありますか?

前提として、基本的には医療機器認定されている医療機器メーカーが取り合っている電気治療器(IVESやESPURGE、H200など)を選択するのがベターだと思います。この中でしたら、最も安価なのはESPURGEかと思います!

練習用などで患者様に使用しない場合であれば、iStim EV-804という機器がオススメです!(僕らが動画で使用している電気治療器です)

上肢にウォークエイドを代用していますが効果は落ちますか?

上肢に対してウォークエイドを使用したことがありませんでの明確な回答ができず申し訳ありません。ただ、上肢は下肢に対して、電気刺激による影響はより局所的とされていまして、狙った筋肉に対してピンポイントの貼付が必要になります。その為、細かな貼付が難しいウィークエイドに関しては、本来の効果よりも落ちてしまう可能性がありますね。また、上肢の運動は下肢の運動とは異なりますので、歩行獲得を主としているウォークエイドが効果的かというと疑問は残るかと思います。

PTなので長下肢装具での歩行練習時などに、大臀筋下部繊維に対し、常時通電しフィードフォワードとして使用したりします。周りのPTはどのような使用をしていますか?

長下肢装具との併用では、PNSとして感覚レベルのし刺激強度で持続的に刺激を行うこともあります。運動レベルで併用する際には、歩行周期上での筋収縮の逸脱がないかを最も意識して介入しています。その為、スイッチをトリガーにして刺激を行うことやIVESを併用する際には機器の筋電ランプや筋電図での波形を確認しつつ行っています。

勤務地にある電気治療器が干渉波のみしかない為、片麻痺の利用者様に対してどのように活用できるのかいまだに分からない事が多いです。

干渉波では一般的なパルス電流を使用した刺激と比較して、深部への刺激が可能であることや、電気による刺激感覚が快適であることが利点となります。その為、疼痛緩和目的に使用されることが多いですが、脳卒中に対しては痙縮の抑制や運動機能改善の報告が一部報告されています。しかし、運動機能に関してはあくまでも運動療法との併用による介入効果として報告されている為、干渉波単独での介入効果ではないという認識を持っておくことが重要です。機器の説明書では全身の血流促進を促すという記載がされていることもある為、離床が困難な対象者やパルス電流では疼痛が誘発されやすい方に対しては有効な介入となる可能性もあると思います。

おすすめの書籍や文献などの紹介をしていただきたいです。

参考書は「標準理学療法学 物理療法学」か「エビデンスから身につける物理療法」がおすすめです。

当院には電気療法機器がIVESしかないため、FESに使用している医療機器のおすすめ等がありましたら教えて頂きたいです。

僕もIVESにてFESを行っています。ただ、パルス幅を調整できる治療器の方が対応できる層が広いかと思いますので、ESPURGEも良いかと思います。その他、H200は装具と一体型で手指の動作を促すにはオススメできます。

失調に効果のある物療はありますか?

電気刺激療法や振動刺激での効果が報告されています。ただ、どちらもまだ強いエビデンスがあるわけではなく、メカニズムも詳しくわかっていません。ただ、個人的には、反応が良い患者様がいらっしゃる経験をしますので、もちろん個人差もあるでしょうが効果がありそうだとは思います。振動刺激に関しては今後のシリーズでお話しできればと思っています。

あまり現実的ではありませんが、例えば2つの電気刺激機器を同時に併用は可能ですか?エスパージが2チャンネルあること考えると、IVESでパワーアシストしながら、エスパージでTENSとかもアリかなと思ってます。

ダメという報告は見たことがありませんので、目的がはっきりとしていれば理論上は可能かと思います。ただ、IVES®︎のパワーアシストモードの場合、他の電気刺激を筋活動として検出してしまい誤動作することがありますので、貼付位置や強度などの調整は必要かと思います。当院には2種類の電気刺激がありませんが、僕だったら試す可能性が高いです(もちろんさまざまなリスクなども考慮しながら)。

訪問看護ステーションで電気刺激療法などの物理療法を導入できないでしょうか?

僕の友人からの話ですが、患者様のかかりつけ医へ電気刺激を使っても良いかの同意書(電気刺激に対するエビデンスや予後予測などをまとめた資料など)を作成し、外来受診時に許可を取ってきてもらった後に開始したという話を聞きました。電気治療器は市販のものもありほぼ使用感は同じですが、万が一のことを考えると医療機器メーカーで取り扱っている医療機器認定されているものを使用するのがおすすめとなります。

下肢での2チャンネルを使用した電気刺激方法について

部分練習として使用する際には、併合した筋シナジーから分離を促す目的で大腿四頭筋と前脛骨筋に貼付して同時刺激することは良いと考えます! 歩行練習の中で2チャンネル使用した電気刺激を行いたい場合には、促したいシナジーパターンに一致する対象筋に貼付し、歩行周期(ランチョ・ロス・アミーゴ方式)上で求めたいタイミングでのみ刺激することができるように調整することを推奨します。

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